「女王蜂」は横溝正史著「金田一耕助」のシリーズ作の一つです。この作品の時期を起点とした作品も多く存在します(月琴島の事件、加納弁護士、など)。ドラマ化も映画化も多め。設定が設定のためか月琴島の位置が色々変わっていたり、登場人物の設定が改変されていたり、ストーリーが大幅に改変されているものばかりです(もはやそれは女王蜂なのか?)。
原作再現しているのは役所広司さんと稲垣吾郎さん主演のものぐらいでしょうか。とくに稲垣吾郎さん主演の女王蜂は設定改変や性別変更されてる衣笠氏が原作通りの設定で登場する唯一と言ってもいい作品かと。なんで稲垣吾郎さん主演の金田一耕助シリーズ、DVD化されないんだろう。
あとこれは余談というか、個人的な感覚になるんだけど、映画の女王蜂の智子が「絶世の美女」と呼ばれるほどかなと思ってしまった。周囲の女性の方が美女ばかりでは……と感じた。
女王蜂のあらすじ
伊豆半島の南方にある月琴島(げっきんとう)に源頼朝の後裔と称する大道寺家が住んでいた。絶世の美女、大道寺智子が島から義父のいる東京に引き取られる直前、不気味な脅迫状が届いた。
女王蜂 あらすじ
「あの娘のまえには多くの男の血が流されるだろう。彼女は女王蜂である……」
この脅迫状には、十九年前に起きた智子の実父の変死事件が尾を引いているらしい。そして…。智子の護衛役を依頼された金田一耕助の前で血みどろの惨劇が!大胆なトリックで本格探偵小説の一頂点をきわめた、驚異の大傑作!!
登場人物 | 作中の役割 |
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金田一耕助 | 私立探偵。加納弁護士の依頼で大道寺家に向かう |
加納弁護士 | 大道寺家顧問弁護士。衣笠氏と懇意の仲。 |
大道寺智子 | 大道寺家の跡取り娘。絶世の美女。衣笠宮の孫娘 |
神尾秀子 | 大道寺母子に尽くす女性で家庭教師。暇なときはずっと編み物をしている。 |
大道寺欣造(旧姓:速水) | 智子の義理の父親で大道寺家の婿養子。琴絵・智子母娘を愛している。蝙蝠の正体。 |
大道寺琴絵 | 智子の母親。欣造とは戸籍上の夫婦。智子が5歳の時に死亡 |
日下部達哉 | 智子の父親。友人の速水欣造と月琴島に訪れ琴絵と契りを結ぶ。19年前に変死している。衣笠宮智詮親王。 |
衣笠智仁 | 舞台のホテルの元の持ち主。宮様。孫娘の智子を見るために変装していた。智詮(日下部達哉)の父親。 |
多門連太郎 | 智子の前に現れた自称婚約者。本名「日比野謙太郎」で遊佐とは旧友。衣笠宮の指示によるもの。 |
大道寺蔦代 | 欣造の妾。大道寺家の使用人で琴絵公認のもと欣造の妻になったが籍を入れていない。 |
大道寺文彦 | 欣造と蔦代の息子。智子に憧れ彼女の婚約者に嫉妬している |
九十九龍馬 | 月琴島出身の行者。4人目の被害者。 |
遊佐三郎 | 智子の婚約者のひとり。2人目の犠牲者。 |
駒井泰次郞 | 智子の婚約者のひとり。 |
三宅嘉文 | 智子の婚約者のひとり。3人目の被害者。 |
姫野東作 | ホテルの庭師。1人目の被害者。嵐座座長の嵐三朝。 |
今回金田一は大道寺智子の護衛という立場で登場し、脅迫状通りに智子の婚約者達が殺されていく連続殺人事件を解明していきます。
はじまりは伊豆にある月琴島、大道寺家の謂われや伝説から始まります。大道寺家の血を引く娘・智子は亡き母親琴絵の遺言もあり、18歳になったら義父の大道寺欣造の所に行くようにと言われていました。18歳になった智子は絶世の美女と呼ばれるほどの美貌をもつ女性です。慣れ親しんだこの島を出ることに思い悩んでいましたが、迎えの使者・九十九龍馬によって本当の父親の死の原因をほのめかされ、心が沸き立ちます。
一方、休暇を取ろうと考えていた金田一に依頼が舞い込みます。加納弁護士による大道寺智子の護衛依頼。自分は腕っ節もからっきしだし護衛には不向きだといいますが、本当の狙いは彼女に脅迫状が届いたのでその犯人を突き止めて惨劇が起きないようにしてほしいというもの。智子を中心にした大道寺家の血縁、そして19年前、智子の父親とされる日下部達哉が謎の変死を遂げたことや琴絵が既に智子を妊娠していた事実も聞きます。依頼者については守秘義務もありますが加納弁護士は絶対に話すことは出来ないと念押ししました。
美貌の女性に惹かれる男達
5月17日。智子たちが九十九の案内の元、月琴島から辿り着いたのは伊豆の修善寺のホテル「松籟莊(しょうらいそう)」。すでに金田一も合流し、彼は大浴場に向かいましたが既に先客がいました。ギリシア彫刻のようながっしりとした肉体美をおしげもなく見せる先客に、金田一は貧相な自分の身体を比較するのはとおもい、浴場を後にします。
欣造と蔦代の息子、文彦はかねてから美貌の義姉の智子に強い憧れを持っていて、彼女の婚約者たちに嫉妬しなんとか足を引っ張ろうと画策します。智子の婚約者の一人遊佐三郎が他の二人の婚約者を出し抜き、智子を松籟莊にまで迎えに来たと知った文彦は他の二人にも連絡しています。
また智子の姿を見に来たと思われる、不思議な老人の姿もありました。ただ彼に関しては情報が少なく、怪しい人物だと思って追いかけるも、彼は逃げていきます。松籟莊に記入した名前も存在しませんが、彼が車で逃げた先は熱海の加納弁護士のところだと後の警察の調べで解ります。
松籟莊での連続殺人事件
第一の事件
そして事件が発生。5月23日に松籟莊の時計塔の中で智子の婚約者の一人、遊佐三郎が死んでいました。第一発見者は智子で、彼女は奇妙な手紙で呼び出されていました。気を失う彼女を抱き留めたのはその男性は金田一が大浴場で出くわした青年で多門連太郎といいます。彼もまた智子と同じ奇妙な手紙で時計塔に呼び出されています。金田一達も駆けつけますが現場が凄惨なものでした。警察も駆けつけて、検屍した結果、凶器はピンポンバットのようなもの、あるいは金属の鈍器で、正面から殴られて即死状態でした。
遊佐は死ぬ直前に多門と密会していて、互いを知っている口ぶりでした。多門もまた、智子の婚約者の一人でした。名刺は確かに大道寺のものですが、欣造は彼のことは知らないと言います。ですが紹介状は正しいので婚約者レースに参加します。ただし乱入しての参加が多く、今回の犯人と疑われているため、彼は智子に「今は逃げますが必ず貴方の所に戻ってくる」と言い、そのまま唇を奪って逃走しました。キザだなあ。警察はこの時点でまだ足取りをつかめていない不思議な老人と、多門を重要参考人として追っていました。
第二の事件
続けてもう一つの事件も発生。5月24日に松籟莊の使用人の一人、姫野東作が海岸近くの防空壕の中で絞殺死体となって見つかりました。発見者は文彦。絞殺された首に赤い毛糸が巻き付けられていました。何故文彦がこんな場所にいたのか、金田一は署長と一緒に防空壕の奥を掘ってみると、ハサミが見つかります。そして蝋燭、のり、便せん、大量の新聞と、智子たちに送られた脅迫状がここで製作されたのが判明します。
実は松籟荘に来てから智子に脅迫手紙を送ったのは智子の弟にあたる文彦。文彦は智子に憧れており、気を引くために新聞を切り抜いて手紙を送ります。そして遊佐が財産目当てで智子に近づきつつ、キャバレーで遊びほうけている遊び人なのをたまたま聞いてしまったため(多門と遊佐の会話)、それを知ってほしくてあのような手紙を智子に送りつけたのです。遊佐と多門を鉢合わせさせて化けの皮が剥がれた姿を智子に見て欲しかった。でもわざわざこんな回りくどいことをしたのかといえば、智子に嫌われたくなかった一心でした。
昨日の夜、二人に出会えなくて手紙を渡すことが出来なかった。この手紙を作ったのは23日の朝で3通作ったと文彦は言います。持ち帰れなかった手紙があると思い、洞窟の中に向かうと姫野の死体を見つけたのです。手紙を確認すれば智子に当てた手紙が、違っているということ。文彦は9時にしていたのに手紙を盗んだ誰かが「はん」という文字を付け加えて九時半にしたのです。犯人は午後9時に呼び出した遊佐を殺す予定だったので、智子が9時にきてもらっては困るのです。
映画だと智子の気を引きたくて脅迫手紙のまねっこをしたということで、一通のみ。出番も殆どありません。
蝙蝠
そして目撃者の秀子の話では、姫野は殺される前に遊佐と会っていたことが解ります(大体午後2時頃)。姫野は松籟莊の使用人でも接触がほぼ無いためか、過去も殆ど解らず彼のことを知る人間も少なく、二人の繋がりはつかめません。姫野は遊佐に19年前の月琴島の話をしていたようで秀子はこっそり耳をたてて聞いていました。すると姫野は遊佐にこう話していたのを秀子ははっきりと聞いていたようです。
――――――『わたしゃ蝙蝠を見つけましたよ。はっはっは、あいつは蝙蝠だ、実にへんな蝙蝠だった』
女王蜂 P181
そして検屍の結果、21時間~22時間前で、姫野は昨日(5月23日)の午後3時~4時に死亡。遊佐が殺されたのが昨日の午後9時なので姫野は遊佐よりも先に殺されていたことが解ります。秀子の話を聞いて、金田一は元々遊佐殺しが目的で姫野殺しはついでだと思っていた犯行が実は逆で、犯人は姫野をまず殺さなければならず、次いで姫野から話を聞いた遊佐も殺す必要があったと話します。
怪老人の正体とライカ
加納弁護士のところに逃げた男性の正体がココで発覚。松籟莊の元持ち主で、皇族に連なる衣笠家の当主・衣笠智仁氏だとわかります。わかりやすく言えば「宮様」です。この方が事件のキーマンなので、映像化の度に改変されていたりしますね。
数日後、金田一は加納弁護士のところに向かい、依頼人から本当の依頼内容を尋ねます。単なる出迎えではなく19年前の月琴島での事件が過失か他殺であるかと吟味していただくことでした。二日しかいなく責任のある答えが取れないと銘打ったうえで、金田一は19年前の事件は警告の通り、智子の父親の日下部達哉は過失では無く他殺だった可能性が高いと話します。そして加納弁護士への依頼人は衣笠氏であり、彼も加納弁護士もお金は問わず、今回の二人の連続殺人事件と19年前の月琴島の事件に繋がりはないか徹底的に洗って欲しいとのことでした。
7枚のライカ
その足で同輩がいる新聞社の新日本社に向かい懇意にしている宇都木に、衣笠氏の家族や周辺を洗って欲しいと言うこと、7枚あるライカを引き延ばして欲しいと依頼を送ります。明後日の30日(日曜日)には両方とも用意しておくから、と宇都木は金田一に話しました。
ライカ(Leica) とは
ライカ Wikipediaより
- ドイツの光学機器メーカーであったエルンスト・ライツのブランド
- 1.が元になったライカカメラ、ライカマイクロシステムズ、ライカジオシステムズの社名の一部
5月30日。金田一が智子の新居に招待されると、執事の伊波が出迎えます。既に九十九と蔦代、欣造、智子の祖父の槇のほか、駒井と三宅も来ていました。金田一を呼んだ理由は、智子のお披露目の宴をやろうと思い、槇が歌舞伎座が見たいと言うことで歌舞伎座で宴をやるので参加して欲しいというもの。30人近く呼ぶ予定で日程は来週の6月6日の予定です。九十九は酒を飲みながら智子を命に替えても守ると言い、その理由が昔琴絵に惚れていたが娘の智子も美しく、忘れ形見というものか彼女も可愛くてたまらない、もしかしたら惚れてしまったのかもしれないと話しました。
そして金田一は、宇都木に頼んで引き延ばした7枚のライカの中に蝙蝠らしき存在を見つけられなかったため、今回の事件の関係者に確認してもらいに来たと引き延ばした写真を見せます。大道寺家の写真、猫を抱いた槇、月琴を抱いた琴絵、編み物をしている秀子、あと三枚は旅役者の写真です。旅役者全員が映った写真と、楽屋の役者を斜め後ろから撮った写真、敵討ちの見得の写真です。それぞれ確認してもらい、蝙蝠らしきものはないといいますが最後の欣造に渡されたとき欣造はおやという視線をある写真に向けたのち、文彦に虫眼鏡を持ってこさせました。欣造が注意深く虫眼鏡で見ていたのは旅役者が全員写っている写真。中央にいるのが姫野東作と伝えれば、金田一達はそれを見ます。秀子が言うにはこの人は旅一座「嵐座」の座長、嵐三朝だと話したことで姫野東作=嵐三朝と繋がります。
一方、逃亡していた多門は、匿ってもらったカオルからある手紙を受け取ります。のたくった文字で多門連太郎様と書いている封筒には、5万円相当の紙幣と歌舞伎座のチケットが入っていました。
襲われる探偵
30日の夜の帰り道、ライカの写真を持っていた金田一は石を投げられたのち暴漢に襲われ突き落とされます。幸いパトロール中の警官に発見され、命に別状はありませんでしたが足を捻挫し、彼が住んでいる割烹旅館の女将に手当をしてもらっています。しかし持っていた7枚のライカの姿が見当たりませんでした。帰る際、ライカを合いトンビにしまったのち、その合いトンビを着せてくれたのは秀子でした。
翌日、金田一はお見舞いに来た秀子に、今回は自分の過失だと訴えます。すると秀子は前日の夜に智子の座敷の下に忍び寄ってきた人間がいると話します。槇も呼んで近くまで行けば逃げる足下も聞こえたので間違いないと。庭に足跡も残っており、ネクタイピンも落ちていました。それは多門連太郎が付けていたやつと智子が話しました。多門連太郎はどういう人物なのか、金田一は皆目見当もつきません。
そして金田一は7枚のライカを無くしたことを謝罪します。ただネガは宇都木が持っているので大丈夫。彼女が酷く驚いていたのが印象的でした。そして昨夜の玄関で歌舞伎座のチケットを落としたので届けに来たとも言います。しかしその後、宇都木が犯人の罠に引っかかりネガを渡してしまったことを話しました。
宇都木が調べた衣笠氏には息子が二人いて第一王子は戦争で出兵し戦死。第二王子の智詮氏はずっと前に若くして亡くなられていて、第一王子は結婚していたが子供がおらず妃殿下も亡くなられているので、一人だけという状態です。欣造は智詮氏の友人で、智詮氏逝去後、衣笠氏は欣造の後援を行っていました。そして欣造はメキメキと頭角を現し、戦後に多くの華族が斜陽となるなか、衣笠家は欣造の出資や財産管理で今もなお裕福。
そして智詮氏は昭和7年10月25日に肺炎で急逝。ただし月琴島に訪れた身元不明の日下部達哉は昭和7年10月21日に逝去しています。従って金田一は、日下部達哉=智詮親王であり、智子は生まれながらの皇女で、衣笠宮のたった一人の孫であると結論づけました。
歌舞伎座
6月6日の歌舞伎座の2階には智子や欣造を中心とする一団ができあがっていました。美しい智子に見惚れる男性達、智子が駒井たちに視線を向けたりするなか、槇と秀子はなにやら疲れている模様。金田一は参加した人間の表情を注意深く観察していました。歓談のちの画廊で金田一が絵画を見ていたとき、宇都木が他人のフリをしながら接触し、衣笠氏がやってきていると話します。ただその容貌からはかつての怪老人と似ている箇所は発見できませんでした。
智子の姿が見えないことに衣笠氏は焦っています。宇都木に彼を見張るよう伝えて智子を探しにいきます。当の智子は化粧室でお色直しをしていたのですが、そこにカオルと名乗るダンサーが登場。幕間のとき3階の廊下まできてほしい、貴方にあいたい人がいるからと伝言を残しました。必ず来てくれないと私が叱られると話した上で。金田一は興奮した文彦に声をかけられ、多門連太郎がこの歌舞伎座に来ていると伝えます。しかし階段を探しても彼の姿は見つかりませんでした。
符号=暗号
金田一は秀子の側に座り彼女が歌舞伎座でも編み物をしていることが珍しいと話しかけます。編み物をしていないと落ち着かないと話す最中、何故貴女は結婚しないのかと金田一に問われ、秀子はびっくり。秀子はかつて惚れた人がいるけど実らなかった、いわゆる失恋してしまったと話します。どんな方と言われれば、ロケットペンダントの中身を見せます。そこには小さく琴絵の写真があり、恥ずかしいから誰にも言わないでほしいと秀子は金田一に話しました。こんな告白をしたことに意味があり、本当は大きい何かを隠そうとしていたのかもと金田一は考えます。
秀子が立ち上がって落とした模様編みの符号を金田一が拾います。金田一はそれが暗号に見えたのですが、秀子は貴方のような職業の人には何でも暗号に見えるのね、と笑った上で「ではこの符号を用いて貴方に暗号を送りましょうか」と伝えました。この辺りの会話がぼやけているので、最後になって唐突に金田一が編み物をしているように見えてしまう映画版。
幕間になったとき、智子はカオルからの要件を果たそうと次の幕間に出かけようかと考えます。興味はあれど踏ん切りが付かない理由は怪しすぎるから。ここでのこのこ出向いて襲われる可能性がある。しかも智子の左右には三宅と駒井がそれぞれ陣取っていて出て行くのも難しい。二人がお茶でもビールでもどうだと誘うのをやんわりと断っていましたが、ついに突っ慳貪な態度で返しました。驚く駒井を尻目に、三宅にお茶の誘いを受けた後、かえってゆで蛸になってしどろもどろになる三宅から離れます。智子を見る九十九にも話しかけ、九十九の館で九十九の行の修行がしてみたいと話しました。そして真っ赤の三宅にちかよりネクタイを直した上で次の幕間出かけたいから駒井を引き留めて欲しいと赤い包み紙の小さなチョコレートを5個渡してお願いするのでした。
次の幕間はすぐだったようで、智子は立ち上がり三宅と駒井も立ち上がります。頼まれたとおり三宅は駒井を引き留めてくれていて、階段に向かう途中で一人の老人と出くわします。老人(衣笠氏)は智子の顔を一頻り見ていますが、智子に声をかけられてハッと動きます。階段にはカオルが待っていて、彼女はこちらだと多門連太郎がいる場所に案内しました。
喫煙場所で黒眼鏡をかけて新聞を見ていた男性が多門で、ベルが鳴ると周囲の男性達がいなくなりその場には二人だけ。時間が無いことや襲ってきたら大声で叫ぶことを最初に伝え、多門と智子は話します。多門は三宅と駒井の素性を聞いた上で、あの二人のどちらかに惚れているのかと問いかけます。三宅のネクタイを直すシーンを多門も見ていたようで、三宅を伸してやろうと思っていたほど。過干渉になる理由について多門は智子に惚れているといいますが、当の智子はなんとも思っていないと素っ気ない返事。そして30日の夜の騒動については智子の周囲が危ういから自分という保護者が必要だと口説きます。ただ多門は彼女の寝室には近寄っておらず経堂にいて、足を怪我した金田一を見かけたと言います。10時頃から智子の姿を盗み見したので満足し、駅から家に向かって帰ったのが12時頃。これは証人もいます。だから深夜2時の騒動は自分ではないときっぱりと宣言しました。
その上で多門は、自分と智子は結ばれる運命にあるし、君を救える存在は自分以外存在しない。それを求めている人がいると言います。智子は次第に彼に惹かれていきます。多門は、松籟莊に泊まった理由もそれだったと。名も無き人から松籟莊に泊まれば南の方から佳人がやってくる、その佳人こそお前の伴侶だという手紙も添えられていたのでやってきたし、今回の歌舞伎座も同様の人からお金と智子の席に近い歌舞伎座のチケットが届いたからきたのです。そして多門は智子に一目惚れ。
二人の話を金田一はじっくりと聞いていたらしく、智子が金田一が探偵という職業じゃなかったら軽蔑したと伝えました。すると宇都木が金田一の所にやってきて人が殺されたと伝えます。被害者は三宅で、彼はトイレで血を吐いて死んでいました。そこにはチョコレートの包み紙がありましたが、赤でなく青い包み紙でした。
第三の事件
幕間の悲劇、三宅の死体の検死に3人の名医が名をあげます。近くの部屋には関係者が集められていました。医者はこれは殺人だから警察に連絡しなければならないといい、支配人は急病では無かったのかと驚きます。ただ当事者以外は関係ないので芝居は行っても構わないと警察に都合を付けて既に連絡したと金田一が話しました。できるだけ騒がないように私服警官とシークレットカーで来たので、支配人が言わなければ閉場するまで大丈夫だろうとも。
やってきた等々力警部に今回の事件の事を掻い摘まんで話すと、修善寺の松籟莊で起きた事件と何らかの繋がりがあると推測。欣造の話では、殆どの人間は席を立たなかったが、智子と三宅と駒井の3人が席を立った。文彦が三宅と駒井が喧嘩をしていると伝えに来たので、欣造が仲裁に入った。二人の喧嘩の内容は智子で、智子が2階に向かったとのこと。そこで2階に上がると知人に出会って話し込んでしまったが、伊波から三宅がトイレで死んでいると連絡を受けたと言いました。相手を明かさない欣造だが、金田一は欣造が話し込んだ相手は衣笠氏だろうと踏んでいました。そして多門の話では名も無き人間が自分と智子をくっつけようとしている、その名も無き人こそが衣笠氏であり、彼は多門と智子の逢瀬を邪魔しないように欣造を引き留めたのではないかと推測します。
三宅は青酸カリ入りのチョコレートで殺されていました。金田一の話では、三宅は智子にもらったチョコレートを食べないかと誘い、金田一が断るとひとりで食べていました。ただ青酸カリは即効性なのでその時に食べていたらすぐに死んでいるので、その時食べたチョコレートではないと判明しました。幕間で喧嘩した駒井にもチョコレートを見せびらかしながら、食べていた三宅は血を吐いて死んだというのです。その時食べていたチョコレートの包み紙は青でしたしたがって死んだ三宅の側には駒井、そして文彦がいました。
智子の側には文彦がいました。そして丸いカンカンを持っています。智子は三宅にお願いしたいことがあってそのお礼に赤い包み紙のチョコレートを5つ渡したと話します。バックの中に赤いチョコレートがバラで入っていました。このチョコレートは文彦がくれたもので、全て赤い包み紙。そしてカンカンの中には青い包み紙に入ったチョコレートしか残っておらず、この包み紙は三宅が握った青い包み紙と一緒でした。そして智子が三宅にチョコレートを渡しているのは九十九も文彦も目撃していたと言います。犯人は文彦が持っているカンカンの中の青いチョコレートを手にして青酸カリをいれて三宅の中にこっそり入れた、ということになります。
衣笠宮さま
多門と宇都木の間で取引が成立していました。多門を警察の手から守ってやる代わりに時期が来たらスクープにする。多門と宇都木が歩いている中、一人の女性が声をかけます。絡んでくる女性は服からピストルを宇都木にあて、自分が人質になるから多門を解放して欲しいと叫びます。カオルでした。多門は馬鹿な真似はよせとカオルを諭したのち、自分はもう少し自由になりたいと数歩後に下がります。すると老人が運転する車が近くに停車し、多門をこれに乗れといい彼を連れていなくなってしまいます。残された宇都木とカオルはまるで恋人のように一緒に歩いて行きます。そして宇都木はいまの運転手が衣笠氏だと見抜いていました。
金田一は衣笠氏の住宅に足を運びます。加納から聞いたのかと衣笠氏が訊ねれば、加納さんは一言も仰らないので自分で探してたどり着いたと金田一が答えました。この事件の解決および犯人検挙の為に協力は惜しまないが、表に出ることだけは避けたいと衣笠氏は口を酸っぱくして言います。金田一もそれは重々承知した上で、現状でわかっている衣笠氏について話しました。そして多門を選んで智子の婚約者に仕向けたのも衣笠氏だが、欣造はそこの繋がりに気づいていない様子。衣笠氏は智子の婚約者について家柄は良いが人間性はクソな奴らばかりだち何度も諫言したが、欣造は頑くなに変更を拒みます。衣笠氏にとってはたった一人の孫、東京で垣間見えるだけでもうれしいのだけど、そんな彼女の婿があんなクソ以下では絶対良くないと、ならばこちらも婿候補を選んでそれが多門だと言います。
多門の本名は日比野で、彼の祖父が外国公使の別当を担当し、小さい頃から多門のことは知っていた。そして巡り合わせの中、不抜けた彼を救ってくれるのは智子しかいないと賭けてみたということでした。なお衣笠氏の変装は欣造仕込みで、彼は学生時代演劇部に所属していたと話しました。
松籟莊の事件の際、夜9時15分頃に衣笠氏は時計塔の中を覗いて、そこで遊佐がたったまま死んでいることを発見。自分の身の上がバレるを防ぐため、そのまま時計塔を後にしたといいます。これにより金田一が思い描いていたアリバイが総崩れ。9時15分~30分にアリバイがある人物が犯人ではないかと考えます。
多門を回収したのは衣笠氏で、住宅に連れてきたのち説論と智子の話について懇々と話しました。多門は驚き、感動し、手を突いて改悛を誓いました。衣笠氏は多門は今回の事件とは無関係だときっぱり伝えます。その上で彼は九十九が怪しいと、九十九の屋敷まで向かったようです。その直後、等々力警部から九十九の屋敷で何やら事件が起きたと連絡があり、金田一も急いで向かいます。
九十九の屋敷
事件は少し前のこと。智子は約束通り一人で青梅にある九十九の屋敷に来ていました。目の前には厭らしい視線を向ける当主の龍馬。九十九はそうして和服を着ていると母親の琴絵にそっくりだ、だが性格はまるで似つかないと琴絵の話をします。琴絵は誰かに従っている女性だったとも。小童に食膳と薬酒を進められ、甘い薬酒を智子は数回飲みます。
温かくなる頬を抑えて酔いが回っている智子に、九十九が何の用事なのか聞いてきました。何でも答えるなら私の言うことも聞いてもらわねば困ると約束した上で智子は19年前に死んだ本当の父親、日下部達哉について訊ねました。崖から転落したのは嘘で、本当は開かずの扉で月琴で殺されたのだと。智子は開かずの扉の中でソレを見たからです。早くその部屋を何とか始末しておけと言ったがそのままにされていた事に舌打ち、九十九は本当のことを知れば貴方はショックを受けるだろうと警告します。
明らかになる真実
お祭りの日なので九十九は毎年くる旅役者の嵐座の世話を焼いていました。そこに秀子が九十九を呼びに来れば、開かずの部屋の中で日下部がザクロのように血みどろで死んでいました。側には槇と琴絵が気が狂ったような目つきで立っていました。秀子から事情を聞けば、九十九は日下部を殺した犯人は琴絵だと言います。琴絵は夢遊病のような体質で前後不覚になる兆候があったからです。琴絵が犯人だとバレてはいけないと秀子たちと話し合った結果、崖から突き落として事故に見せかけてしまおうと。九十九は琴絵に惚れていたのでソレを引き受けます。琴絵は日下部を殺したときにヒステリーになっていたのは智子を妊娠していたからだとも言うのです。
答えたのだから今度はこちらの番だと息が荒い九十九が智子にちかよってきます。この屋敷はパズルのような部屋になっていて、かんぬき次第で開閉ができてしまう。したがって部屋の中から空かないようになっています。そこに閉じ込められた智子は脱出しようとしますが、彼女の弱い腕では逃げられません。
九十九は琴絵以上に智子に惚れていて、袴を脱いで迫ってきます。羽交い締めにされて自分の目を見ろという九十九に抵抗しますが、目を見てしまったことで催眠術にかかってしまいます。畳に押し倒され、夢心地の中で九十九に襲われますが、そのまま眠ってしまいます。智子の裾を剥ごうとしたとき、九十九がうめき声をあげて殺されたことを知らないまま。
ここから事件は急展開を迎えます。果たして智子の母親が父親を殺したのか、犯人は誰なのか――――それは原作を読もう!
女王蜂のネタバレ
映画だけだと色々省略されているので犯人がわかっても「え?なんで???動機は???」となりがちな作品。特に市川崑監督の映画だと、動機をあやふやにしているので解らない人いそう。普通に■■が犯人で終わってしまっててその後の真相も書いているんですが、時間が足りなかったのか私の理解力が至らなかったのか、よくわからなくて。
女王蜂の犯人のネタバレ
日下部達哉(衣笠智詮)・姫野東作(嵐三朝)・遊佐三郎・三宅嘉文・九十九龍馬を殺害したのは大道寺欣造です。彼を庇って罪を引き受けたのは神尾秀子です。秀子は欣造を殺し自分も遺書を残して自殺します。その遺書は彼女がいつも編んでいる毛糸玉の中にあり、映画では金田一が、原作では智子が編んで見つけます。
19年前の日下部殺しの真相は、その時不在だとされた速水欣造(=大道寺欣造)が嵐座の一員に紛れ込んで日下部を殺しました。月琴島からは島民、嵐座からは座員と見えるように振る舞って。日下部は速水が嵐座にいるのを見つけ、彼を嵐座と月琴島を行き来している蝙蝠だと称したのです。
女王蜂の犯人の動機
大道寺琴絵を愛していたが彼女からの愛はもらえず(=振り向いてもらえず)、彼女の娘の智子を愛してしまった為。映画での「君では琴絵さんを幸せに出来ない!」と振りかぶって日下部を殺す欣造(仲代達矢さん)が印象的でした
智子に近づく男に嫉妬して殺害した反面(既に姫野と遊佐を殺したことで止まらなくなった)、戸籍上の娘という立場の理性から彼女に手を出すのを憚り、智子に月琴島から出ないように脅迫状を送ったりしていた。姫野東作と遊佐三郎を殺害したのは嵐座に潜入した自分の過去を知っていて、かつ19年ぶりに大道寺を見かけ当時のトリックを察した姫野が遊佐に粗方喋ったのを聞いたため。二人殺してしまったらもう後は誰を殺そうと同じことと、残りの候補者の三宅も、智子を襲った九十九も殺害しました。
秀子は欣造を19年前から好きでした。そのため琴絵が日下部と結ばれて結婚してしまえば欣造は琴絵を諦めて自分と結婚してくれるだろうと思ったのです。しかしそうはいかなかった。欣造は秀子の予想を超えて琴絵を愛していたのです。
ライカを盗んだ犯人
金田一の手から7枚のライカとネガを盗んだのは大道寺欣造です。
引き延ばしたライカを見る中で欣造は嵐座の写真に自分がいることに気がつき(その時は姫野を明らかにしてそっちに向かせた)、トリックが表沙汰になるのを防ぐために金田一からライカを、宇都木からネガを奪い取りました。
そしてこのことから秀子は今回の事件の犯人が欣造ではないかと思い、自分が持っている写真で彼がいることを確認して理解するのです。
女王蜂のまとめ
智子が一番不憫でしょこれ
本人は何も悪くないのに、その美貌から男達が勝手に狂って自滅していったり、血筋から色々面倒ごとに巻き込まれたりと散々すぎる。唯一の良いところは多門連太郎がいい男だということ。さすが御祖父様が選んだ男だ。唯一お祖父様が生きていたのが幸い。
女王蜂は最後の一文が凄く好きなので騙されたと思って読んで欲しい
今回の画像もこちらよりお借りしました!