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【ネタバレあり】横溝正史・長編「悪魔が来りて笛を吹く」を紹介

「悪魔が来りて笛を吹く」は金田一耕助の時系列からみてかなり初期に起きた事件です。のちに天銀堂の事件とか椿子爵邸の事件とか呼ばれるようになります。映像化も多いため「都会編」では一番有名な作品ではないでしょうか。珍しく市川崑監督では映画化されていないんですよね。

映像化も多い割にインモラルで出生を追う話のため、どうまとめるか苦心している点がありますね。全部東京で終わらせたり、ちゃんと瀬戸内海に行ったりとバラバラ。

ゆきんこ

私は、NHK版の悪魔が来りて笛を吹くのラストが好きです。原作以上に不幸すぎる犯人が不憫すぎて

浅田さん

なに、その「ころしたくないけどころすしかなかった」みたいな表現は

悪魔が来りて笛を吹く
目次

「悪魔が来りて笛を吹く」のあらすじ

世の中を震撼させた青酸カリ毒殺の天銀堂事件。その事件の容疑者とされていた椿元子爵が姿を消した。「これ以上の屈辱、不名誉に耐えられない」という遺書を娘美禰子に残して。以来、どこからともなく聞こえる”悪魔が来りて笛を吹く”というフルート曲の音色とともに、椿家を襲う七つの「死」。旧華族の没落と頽廃を背景にしたある怨念が悲劇へと導いていく――――。
名作中の名作と呼び声の高い、横溝正史の代表作!!

悪魔が来りて笛を吹く あらすじ

秋子夫人の「あき」が火へんに禾という常用漢字外のため、今回は「秋」表記で行きます。すみません

登場人物作中の役割
金田一耕助私立探偵。
等々力警部都会編相棒
椿美禰子今回の事件の依頼者。椿元子爵と秋子の子供
椿英輔元子爵。行方不明のうち遺書を残して自殺する
椿秋子(あきは火へんに禾)椿元子爵の妻。無邪気且つ性に奔放で伯爵家の娘。五番目の被害者。
新宮利彦秋子の兄で新宮家当主。金食い虫。二番目の被害者。人面獣心。さすが横溝正史ゲス野郎殿堂入りの1位だ
新宮華子利彦の妻で気の弱い女性。
新宮一彦真面目な青年。利彦と華子の子供。
玉虫元伯爵秋子と利彦の伯父。元は貴族院の長もやっていた。最初の被害者。利彦のお目付け役。辰五郎に治雄のことで揺すられていた
三島東太郎椿元子爵の友人の息子。右手の中指と薬指がない。彼が買い出しをしている。河村治雄。
目賀重亮通称「蟇仙人」「目賀博士」秋子の主治医。本当は秋子のお目付け役
菊江玉虫伯爵の愛人
信乃秋子付の侍女。老婆。
河村辰五郎玉虫邸出入りの庭師。伯爵からお金をもらっていた。本当は治雄を元に玉虫元伯爵をゆすっている
おこま辰五郎の娘。利彦に犯され小夜子を産む。娘の小夜子が自殺したため出家して妙海尼と名乗る。三番目の被害者。
小夜子利彦とおこまの娘。畜生道に堕ちたと言い残して自殺する。異母兄の治雄と密通し子供を妊娠する
飯尾豊三郎椿元子爵に似た男。四番目の被害者。天銀堂事件の真犯人。

世間を騒がせた宝石強盗事件の「天銀堂事件」。ちなみにこの事件は実際の事件をモデルにしている模様です。金田一のところに一人の女性が依頼しに来ます。彼女の名前は椿美禰子。天銀堂事件の犯人のモニタージュ写真によく似た男性、椿元子爵の娘でした。天銀堂事件のとき彼はアリバイが合ったのですがなぜか語らずようやく瀬戸内海に行っていたことを話します。その直後行方不明になり、遺書を残して自殺していたことが発覚します。遺書は「ウィルヘルム・マイステル(ヴィルヘルム・マイスターの修行時代)」の下巻に挟まっていました。

美禰子よ。
父を責めないでくれ。父はこれ以上の屈辱、不名誉に耐えていくことは出来ないのだ。
由緒ある椿の家名も、これが暴露されると、泥沼の中に落ちてしまう。ああ、悪魔が来りて笛を吹く。父はとてもその日まで生きていることは出来ない。
美禰子よ、父を許せ。

悪魔が来りて笛を吹く P32

美禰子の母親秋子は自殺した旦那の英輔の姿を見た、彼はまだ生きているといって聞きません。彼女の主治医の目賀博士がオカルトに長けており、彼の指示の元、砂を利用した降霊術(こっくりさんみたいなもの)を行って確かめることになりました。美禰子の依頼で金田一は一彦の先輩として椿邸に入り、降霊術に参加します。降霊術に参加するのは秋子、利彦、華子、一彦、玉虫元伯爵、菊江、東太郎に金田一の7人でした。その間も秋子は英輔が生きている、自分は彼の姿を見たとヒステリーを起こしていました。この時間は電気配分の関係で停電する時間が決まっており、その時間を利用して真っ暗ななか降霊術を行うというものです。金田一は近くの雷神の像に自分の帽子を置きます。降霊術が行われると砂には火炎の太鼓が刻まれていました。これに大いに驚いたのは玉虫元伯爵と信乃でした。

そして椿元子爵が残したフルート曲「悪魔が来りて笛を吹く」がどこからともなく流れてきます。その曲を聞いて秋子がヒステリーを起こしていました。金田一が音のある方向に向かうと、レコードにセットされていて曲が流れていました。これは停電が回復すると自動的に流れるようにセットされていた簡易的なものでした。この悪魔が来りて笛を吹くのレコードは秋子がすべて叩き壊したため、椿邸には残っていないはずなのですが……。帰る際、金田一は雷神の像においていた帽子が見事にハマってしまい、取り出せなくなって奮闘していました。東太郎のおかげでとることが出来たので金田一はそのまま帰ることにしました。
金田一はその夜、火焔太鼓とそれを取り巻く人々の顔、レコードや曲について考えながらうとうと眠っていました。朝方、女中に美禰子からの電話があると変わってもらい、内容を聞けばついに事件が発生したため来てほしいとのこと。
椿邸は興奮気味の野次馬でごった返していました。斜陽族の事件、英輔の失踪自殺事件、天銀堂の事件が混ぜ込み新聞記者を含めかなりの人々が来ていて、応対する警察官も興奮気味。今回の事件担当が等々力警部でなければ金田一は椿邸に入ることすら難しかったぐらいです。

第一の事件

事件は降霊術が行われた部屋で発生。被害者は玉虫元伯爵で、彼は後頭部を打ち付けて血が出てカーペットを赤く染めています。撲殺ではなく首に巻いていたスカーフでの絞殺、鼻から頬にかけて殴られた痕があり、鼻血が出ています。ハンカチで拭った痕も。なにより目がカット見開き、まるでなにかに驚き恐怖した顔だったのです。ドアには斧でかち割られた痕が残っていて、近くに目賀博士と東太郎がいました。
玉虫元伯爵の愛人の菊江が午前3時ぐらいになっても玉虫元伯爵が戻ってこないことに気が付き、探したところ降霊術を行った部屋にいました。上の欄干の隙間から覗いたところ玉虫元伯爵が倒れており、当初は脳溢血ではないかと目賀博士と東太郎を呼んで開けてもらうことに。美禰子や女中のお種も駆けつけていました。鍵の閂は完全にかかっており、東太郎が斧でドアを破って閂を外して部屋の中に入ったとのことでした。ドアの上の欄干は手が入る程度の隙間しかなく、ここから侵入することは出来ません。窓の鍵も内側からかかっておりこれは密室殺人だと金田一は言います。
なお興奮気味に入った目賀博士はドア近くにあった椅子にあたってコケたといいます。そしてお種は別宅にいる新宮家を起こしに行く際に英輔の姿を見たといいますが、目賀博士が言うには蜃気楼ではないかとのことでした。砂に刻まれた火焔太鼓の紋章も残っており、利彦がそれを消そうとしていましたが咎められています。
金田一は血のついた雷神を取り上げます。そして雷神風神といってこれらの像は対になっているもの。この部屋の机にいつも置かれていますが、降霊術の際には気にしなかった模様。手頃な大きさで凶器としてもちょうどいいサイズ。そして風神の像が見当たりませんでした。

菊江は玉虫元伯爵の妾で一人前にしてもらったといいました。彼女の話によれば玉虫元伯爵は昨日の夜降霊術の部屋でなにか考え事をしており、菊江が部屋に行こうといっても聞こうともせずにうるさいと行って追い出す始末。ぶつぶつと呟き、菊江は年寄り特有の気難しさだと東太郎やお種には先に寝てもらい、戻ってくるのを待っていました。しかし朝方にも戻ってこないためお種や東太郎を呼んだというわけです。菊江も劇場で英輔の姿を見かけています。
お種の話によれば、新宮家を迎えに行った際に英輔の姿を見たといいます。黄金のフルートで悪魔が来りて笛を吹くを吹いていました。その黄金のフルートは英輔が亡くなった際に紛失したとお種は語ります。刑事が奥の防空壕から持ってきたケースが英輔愛用のフルートのケースで、フルートは3つに折ることができるというのです。その中には宝石のイヤリングが挟まっていました。これは天銀堂事件で盗まれたものではないかと金田一は言います。

美禰子は考え事をするときに防空壕にいきます。つい最近も行ったばかりでその時はフルートのケースはなかったときっぱりいいます。英輔は最初から天銀堂事件の容疑者としてマークされていたのではなく、とある密告者によるものでした。その密告状はタイプライターで書かれていました。英輔は家族には温泉旅行に行くと話しており、本当は関西旅行で須磨に行っていました。これは裏が取れています。このことは誰にも秘密だという条件で警察に話していました。
まだ東太郎がいない時期に泥棒が入り、色々盗まれたのですがその中に雷神風神の像もありました。ですが雷神の像だけ見つかったといいます。
椿邸には美禰子所有のタイプライターがあり、密告状のタイプライターと文字が酷似しています。英輔の勧めで就職するために習っており、学校卒業後は雇って貰う予定でした。特別なタイプのタイプライターで、この屋敷の中では美禰子以外では一彦と菊江が打てます(彼女も勉強している)。真っ暗な防空壕の中には机と椅子があり、音が聞こえるタイプライターをここでうってもとに戻せば密告状を作ることは可能。文字の位置が同じなので熟練者ならまぶたを閉じていても……真っ暗な中でも打つことができると金田一は言います(今で言うキーボードですね)。

椿邸の中には温室があり、亡くなった英輔が収集していた花や植物があります。今は一彦と東太郎が面倒を見ています。東太郎は英輔の友人の息子で、元は中国地方の人間、岡山出身でした。上方訛が残っています。復員したときには両親がすでに死んでいて、ブローカーまがいのことをしている最中で英輔のことを思い出し尋ねれてみれば渡りに船だった様子。椿邸に住む人間の多くは斜陽族で買い出しもまともに出来ない人間が多いため、とても重宝されたと東太郎は言います。
天銀堂にフルートのケースから出てきたイヤリングを確認したところ、見事に一致。これは特注のものなので瓜二つのものはありません。そのためこの事件に天銀堂の犯人が関わっているのは確実だと等々力警部は話します。

秋子の侍女の信乃も、英輔を見たと話します。ひどく怯えた秋子についていく形でトイレの共をした信乃ですが、明この悲鳴を聞いてトイレの中に入れば窓の外に笛を吹く英輔の姿。これを知るのは駆けつけた目賀博士と利彦。目賀博士は年を召しており、利彦は意気地がなく勇気もないので探しに行くことが出来なかった。火焔太鼓については全く心当たりがないと良いました。利彦はこの屋敷の人間から嫌われ内心見下されていました。

次にやってきた利彦は妻の華子とやってきます。酒を飲んでいた利彦はシャツを脱ぎこれが悪魔の紋章だと火焔太鼓の痕を見せました。それは砂に刻まれた火焔太鼓と酷似しています。利彦が言うには普段は見えないのですが入浴中とか酒を飲んだときに浮かび上がってくる様子。この火焔太鼓についてはこの屋敷の人間で若い人間以外なら大抵の人間が知っています。しかし先程信乃がどうして知らないといったのか利彦は不思議でなりません。先日の降霊術に浮かび上がった火焔太鼓に玉虫元伯爵や信乃がどうしてあんなに驚いたのか利彦や華子は疑問だったと話します。この屋敷の人間なら自分の肌にあるのは知っているはずなのに。
英輔の遺書の手帳の中に「悪魔の紋章」と描かれた火焔太鼓があったことについて利彦は全く心当たりがないと語りました。利彦は英輔のことが嫌いで馬が合わないといいます。本来自分に譲られる利彦の両親の遺産が秋子に多く譲られ、その旦那の英輔が使用できる立場になったのだからといらだちを隠しません。本来なら自分が利用できる遺産だったというのに。
あの火焔太鼓には利彦や華子とは全く違う何かを指し示していて、それらで玉虫元伯爵たちが恐れ怯えたのではないか。それらは利彦たちが知らないことなのではないかと金田一は考えます。
一彦は英輔のフルートの弟子なので悪魔が来りて笛を吹くを吹くことができます。譜面があるのでといい、金田一は今度聞かせてもらおうといいます。ですがこのとき一彦に吹いてもらっていれば犯人の目星がついたかもしれません。

密告状のタイプライターは素人から見ても同じ印字でした。よくよくみれば密告状のYとZがすべて逆になっています。前後なら「Yengo」など。間違えた箇所を紫鉛筆で修正されていました。美禰子がライターの先生に気になって聞いてみたところ、ドイツ製のタイプライターはYとZが逆になっているとのことです。

椿英輔の小旅行

玉虫元伯爵が殺されてから三日後。金田一は出川刑事と一緒に関西に出かけていました。英輔の旅行のアリバイを再吟味、調査するためです。新聞記者に嗅ぎつかれては困るため極秘任務です。
美禰子の話によれば、遺書はウィルヘルム・マイステルの下巻に挟まっていました。英輔の日記を見れば2月20日に挟んだとあり、天銀堂事件の前から英輔は自殺する決意を固めていたといいます。遺書の中にある「これ以上の屈辱」「不名誉」「椿家の家名」が天銀堂ではないとすると一体何が原因だったのでしょう。それらは1月の関西旅行にあると思い、金田一は英輔が旅行した須磨に向かっているのです。

須磨寺の三春園に出川刑事と泊まります。金田一が女将から1月の英輔のことについて再度調べ直しているから教えてほしいと聞けば、あのような人が犯人ではないと女将が銘打って話し始めます。このあたりは自殺の名所だから当初は自殺者だと思っていた、このあたりの旅館は連れ込みを防ぐため男女の客じゃないと泊めないようにしていることで英輔は断られていて困っていました。女将が不憫がって英輔を14日に泊めたと話します。英輔は3泊4日で17日三春園を出たと女将が言います。
今回の金田一の旅は三春園に泊まった人物が正しく英輔であったか、別のところにもあり是非とも女将たちに協力してほしいといいます。15日は朝でかけて昼帰ってきて、昼ご飯を食べて夕方に帰ってきて、遠くに出かけていなかったと女将が言います。16日は遅くなるので弁当を作ってほしいと言われ用意したと。帰ってきた英輔は顔面蒼白で今にも自殺しそうな面持ちで女将たちも心配していました。すなわち16日に出かけた場所が英輔の自殺を決定づけるなにかがあったのではないかと金田一は考えます。その日なら英輔が番頭に明石に行くための路線を聞いていたので、番頭は英輔は明石に行ったのではないかと話しました。

女将は玉虫元伯爵の別荘がこの近辺にあるため、彼を知っていました。今度の事件で英輔が玉虫元伯爵の親戚なのも新聞で知ったとのこと。英輔は子爵とは一切言わなかったため、彼らが知らないのも無理ない話ですが。玉虫元伯爵に姪がいるのも知っていましたがその姪の旦那が英輔だと知ってひどく驚いていました。そのことではなく、英輔が「このあたりに玉虫元伯爵の別荘が合ったはず」といったことを思い出したといいます。今はもう手放して焼け野原になってしまったが、手放す前は秋子を始め親戚の子どもたちが変わる代わる遊びに来ていたと女将が話しました。

女将は話しものではないと誰にも言わないでほしいと口止めをした上で、玉虫元伯爵の屋敷に出入りする植木職人の1人に、辰五郎(植辰)がいました。彼には娘のおこまがいます。おこまは器量もよく行儀作法もしっかりしているので臨時の小間使いとして玉虫元伯爵のところに手伝いに行った際に誰かに孕ませられたと女将がいいます。誰が相手なのかはわからず仕舞いですが、玉虫元伯爵が手切れ金を渡しておこまを返します。孕んだ娘を外の嫁に出せないので、辰五郎は自分の弟子におこまを嫁に出しました。おこまは小夜子という娘を産みました。弟子はおこまを苛め抜いたといいます。ではおこまを孕ませた相手は誰なのか、女将は奉公人同士ではありえないので玉虫元伯爵の親戚の誰かではないかと話します。利彦の顔を思い出そうとも思い出せず(新聞見てもわからなかった)、影の薄い人だと結論付けます。相手が玉虫元伯爵の可能性もありますが、その場合ならちゃんと産ませて里子に出す器量は持っていた男性だとも。辰五郎の弟子は身を持ち崩して極道になってしまったので、おこまは小夜子を連れていなくなってしまいます。辰五郎は羽振りがよく、植木職人を弟子(おこまを嫁にした弟子とは別人)に譲ってからは博打をしつつ引っ越してしまったといいます。

悪魔ここに誕生す

出川刑事が辰五郎の弟子の植松のところに聞きに行っている間、金田一は玉虫元子爵の別荘を見に行ってみようかと女将に尋ねます。石灯籠ぐらいしか残っていないと話して、女中に案内させます。女中は玉虫元子爵の別荘がある近辺に戦火を免れた家族がいて時々遊びに行っています。その帰りの夕暮れに石灯籠の前で佇んでいる英輔を見たといいます。そして16日に向かった場所がなんとなくわかると案内途中の女中が話します。女中は英輔の服を洗濯していると潮の強い匂いや服の裾に魚の鱗が合ったことから、漁師の船で淡路島に向かったのではないかと推測しました。
女中は連絡船より漁師の船でいったほうが確実だしバレないでいけると話している最中に、玉虫元子爵の跡地につきます。佇んでいた石灯籠につけば、そこには「悪魔ここに誕生す」と青鉛筆で英輔の筆跡で書かれていました。

出川刑事の話によれば辰五郎は空襲で死んだとのこと。弟子の植松が亡骸を引き取って形ばかりの弔いをしました。その際に辰五郎の関係者といえば、娘のおこまと、妾に産ませた治雄。辰五郎の妾のひとりおたまがおこまの居場所を知っており、彼女を連れてきました。その際に小夜子は死んだと言ってそれっきり理由を話しませんでした。治雄も父親が女をとっかえひっかえするため、家にいづらく小学校をでて奉公にいき、家にはほとんど寄り付かなかったといいます。おたまの姿を追ってみればおたまは奉公してた旅館からいなくなってしまっていました。ただ近辺、淡路より妙海という尼が彼女を尋ねてやってきたそうです。淡路からきた尼という言葉に金田一はひどく驚きます。尼の姿形を聞けば50代の小綺麗で顔色が悪そうな方、右の目尻に小さなほくろがありました。女将はその尼はおこまではないかと推測。おこまも右の目尻にほくろがあったからです。おこまは40代ですがひどくやつれて顔色も悪かったため老けて見えたのでしょう。妙海がおたまを尋ねてやってきた日は10月1日で、事件が明るみになった日のこと。そして妙海はひどく慌てていたとおこまがいた旅館の人間は話していたというのです。

翌日、金田一が起きた時分には同部屋の出川刑事は神戸に出ていったそうです。明石には番頭が。そこで金田一は久保銀造と磯川警部にあてて手紙を書きました。二人は岡山のあたりに住んでいて、挨拶もできればと思ったのですが操作の進展次第ではそうもいかないので手紙で失礼したと話します。出川刑事は「悪魔」を小夜子ではないかと良い、その小夜子は菊江かお種ではないかと考えます。玉虫元子爵がおこまに手を付けて生んだ子どもが小夜子で、体裁を気にして妾として娘を引き取ったのではないか、華族は近親婚が多いのでおじと姪で結婚したとしてもは気にしないだろうと推論していました。
そして辰五郎に玉虫元子爵からお金をもらったらしく相当羽振りがよかった模様。その後も辰五郎は玉虫元子爵を揺すっていたらしく、おこまのことなら一時金で問題有りませんし、玉虫元子爵は辰五郎のような人間に尻尾を出す人間ではありません。よほどのウィークポイントを辰五郎に握られていて、お金を払い続け、それは小夜子ではなかったと金田一は言います。
出川刑事は戻ってくる際に石灯籠を見に行ったのですが、金田一が見たとされる箇所が白く削れていたといいます。今回の事件の関係者がヒトを使わせて削らせのではないかと。そして出川刑事が訪れる1時間前、神戸の疎開地でおたまのことを聞いてきた男性がいたというのです。その人相を聞いているうちに英輔の写真を出して確認したら、メガネや口ひげはしているけど似ていたと話がありました。

ともかく淡路からきた妙海尼がおこまだというのは間違いないだろう。彼女に会いに行こうと金田一と出川刑事は考えます。ちょうど明石に行っていた番頭が淡路に行く漁師の船を捕まえてきたと報告がありました。その漁師は英輔を淡路に送った漁師と同じです。彼は釜口村に行くためにはどうすればいいかと英輔が尋ねてきたのを覚えています。他の証言を総合し、英輔が淡路の妙海尼(おこま)に会いに行ったのは確実でしょうとなりました。

第二の事件

連絡船には出川刑事と同じ覆面刑事が数人乗っていました。淡路島を巡る時間を確認し、だいたい二時間ちょっと。バスや連絡船を逃したらここに一泊の予定になります。やはり出川刑事は覆面刑事が気になったようで、淡路島についたときに警察手帳を見せれば向こうは驚き、その理由を話します。昨日の夜六時ぐらいに妙海尼が絞殺されていたため、それを調べに上陸したとのことでした。今朝の正午に届け出があって、発見が遅れたのは今朝の嵐があったからです。昨日に妙海尼のことを聞いてきた男性がいるため、犯人は彼だと非常線をはりますが、すでに本土に戻っている可能性が高いです。妙海尼のことを聞かれた女性に話をきけば、ここから往復1時間でも余裕、そして帽子やヒゲが生えているけど英輔の写真と酷似していると話します。神戸でおこまのことを聞いてきた男性でした。

金田一はおこまの死体を見ます。彼女も夏に玉虫元子爵のところに奉公に出なければもっと別の生き方があったでしょうと。子どもを孕まされて小夜子を生んだ。このことが彼女の一生を覆い包んだように見えます。しかしそれだけで殺されるような人であったか。もっと別の何かを知っていたために彼女は殺されたのではないかと金田一は考えます。犯人が危険を冒しても殺さなければならなかった重大な秘密を知っていたために。
おこまは几帳面な性格で、小綺麗にしていました。普段は一つの新聞を取って控えているのですが、10月1日の事件だけでは様々な新聞を取っていました。

おこま(妙海尼)を世話したお坊さんと面会します。金田一と出川刑事は身の上を語ったうえで、おこまが今度の事件の何か、犯人を知っていて殺されたのではないかといいます。それを調査するのに気づいたので先回りをしておこまを殺害したのではないかと。お坊さんはおこまの話を信じきれないと思い、突っ込んだことを聞かなかったことを後悔しています。そして小夜子の父親は利彦で、おこまは今回の事件は玉虫元子爵だけではなく、今度は利彦も殺されると話してました。お坊さんも小夜子とは一度会ったことが有り、とても良い娘だったといいだがあの娘は自殺してしまって位牌がそこにあるといいます。そしておこまは訪れた英輔に洗いざらい話してしまったことをとても後悔していたとお坊さんは告げました。

今度はおたまも狙われるのではないかと急ぎ本土に上陸し、三春園に戻ってきます。すると県警から出川刑事宛に東京から電話があり、利彦が殺されたので、須磨明石のことは出川刑事に任せて急ぎ金田一に戻ってきてほしいと連絡がありました。

第三の事件

玉虫元子爵が殺されてから6日が経過した10月4日。この日の夜の椿邸は無人でした。正確に言えば各々用事があって利彦と秋子以外出払っていました。しかし後になってみれば、これは仕組まれていたものでした。
夕方利彦がやってくれば、菊江は東劇、信乃は秋子の母方の生家に呼ばれ、東太郎は明日の玉虫元子爵の初七日の必要物資の工面、目賀博士は明日の会合が今日になったから急いで出ていったといいます。そして美禰子と一彦は就職あっせんのため、出かける様子。自分の快楽を負い自分以外は何も知らない利彦に美禰子は苛立ち、怒りをぶつけますが、秋子がそんなこと言ってはいけないとたしなめます。その言いぶりは甘ったるい声。そして秋子の「お兄さま」と呼ぶ声は女学生のようで悪寒がするため、美禰子は利彦を苦手としていました。そして利彦が癇癪を起こし金がないと叫び、美禰子を遺産を奪い取った泥棒猫だと罵ります。華子が諦めて実家に行ってお金を工面してくると言ったので、さっさと行けと追い出してしまいました。

まず8時半に帰ってきたのは大きなリュックサックを抱えた東太郎。屋敷の外には刑事が見張っていましたが、あまり熱心なものでは有りませんでした。迎えたお種が使用人部屋でそれぞれの行き先を話します。すると次に帰ってきたのは信乃。信乃はかなり慌てており、椿邸になにかないか、自分がいない間に秋子に変わりはないかと尋ねます。そして外に刑事がいたので付いて来てもらったとのこと。一緒に来てほしいといい、お種は信乃がこんなに怯えている姿が珍しいといい、秋子のところに行きます。秋子は変わらず甘ったるい声で何も変わりがなく、信乃はほっとしてお種と刑事にもう大丈夫だと言いました。そして秋子の母方の生家では信乃に来てくれという電報を打っていないというのです。入れ違いに帰ってきたのは菊江。菊江がみたお芝居はあまりおもしろくなかったとのこと。続けて目賀博士が帰ってきます。会合はやっぱり明後日で今日ではなかった、電話をかけてきた主に聞いてもそんな電話していないと話します。特に変わりがないかと尋ねればお種は問題なかったと答えました。10時頃に帰ってきたのは美禰子と一彦。一連の話を聞き、夜も遅いので明日考えてみようと二人は寝室に向います。最後にきたのは華子。母屋に利彦が帰ってきていないか聞いています。お種の話では、出払った後利彦と秋子がを話をしてから別宅に戻っていったとのことです。

直後、秋子の部屋から目賀博士の罵声と秋子の啜り泣く声が聞こえます。お種と東太郎が見に行けば、目賀博士がネグリジェ姿の秋子の髪を掴んで「このあばずれ」「お前が誰かと打ち合わせてわしと信乃を追いやって誰かをおびき寄せたんだ」と叫びベッドに押し付けています。それを隅っこでとりなす信乃の姿。それを後ろから目撃して怒りに震える美禰子。信乃はここは私がとりなすから、と美禰子たちを追いやります。

そんな椿邸を再び悪魔が来りて笛を吹くのフルートが聞こえ、悲劇が襲います。フルートの音色は温室の庭から聞こえます。美禰子は一緒に来たお種に母の秋子を任せ、雨戸を開けて庭の中に入ります。続けてきたのは東太郎と菊江、信乃。華子と一彦も合流し、温室に集います。その間もフルートの音色は鳴り続けました。目賀博士が電気をつけ、辺りを見て利彦が殺されていると話したのです。凶器は無くなっていた風神の像と、近くにあった棕櫚縄(しょろなわ)です。

新宮利彦という男

金田一が戻ってきたのは10月6日の午前11時頃。利彦が殺されたのは10月4日の午後7時半頃で美禰子たちが見つけたのが5日の午前1時頃。これはほぼ確定で、新宮家が住む別宅に行くためには温室を通らなければならない、そして別宅には利彦が戻ってきた気配もなく、殺されていた利彦の姿は夕ご飯で見た格好と同じだったからです。そして一体全員を追い出したのか、犯人が利彦を殺すためならまず追いやらなければならないのは奥さんの華子。そして華子は利彦の言葉で工面しに出かけています。しかしわざわざ偽電報や電話をやってまで外に追いやったのは信乃と目賀博士。そして目賀博士は秋子相手に罵っていたことについて記憶にないというのです。

電報を受けた郵便局の局員も判明していて、記憶のないが家人に合えばわかるだろうと椿邸の人間に引き合わせています。温室でフルートの音色についてはスイッチの切替で電蓄がなるのがわかっていました。植物を見ていると、ウツボカズラの中に金の指輪がありました。この指輪を金田一は覚えていました。降霊術の際に秋子がつけていた指輪だからです。美禰子に確認したらこれは確かに4日まで秋子がつけていた指輪です。秋子は宝石狂いで指輪がなくなれば大騒ぎ。しかし全く騒いでいなかったのです。そして金田一は局員を呼んでほしく、家人の中で一人だけ会っていない人物がいるといいます。その男は利彦でした。

金田一は信乃に電報をうち、目賀博士を呼び出した人物は利彦だったといいます。局員も利彦の顔を見て、この男だったと記憶を思い出します。利彦はこの日信乃と目賀博士と華子以外出かけることを知っていて、厄介な信乃と目賀博士を追いやるために一芝居売ったのです。その理由は妹から金を融通してもらう話をすること。宝石の指輪がなくなっても秋子が騒がなかったのがその証拠です。
二人っきりになった利彦は秋子と話して金の融通に成功します。現金がないからか利彦が指輪で良いと言ったのか、秋子は指から指輪を離して利彦に渡します。指輪を手に別宅に戻ろうと温室を歩いているときに犯人に引っ張り込まれて殺害されました。指輪は犯人によってひとまずウツボカズラの中に隠されたと金田一は一連の流れを説明します。等々力警部はなんで利彦は信乃と目賀博士を追いやる必要があったと金田一に尋ねます。それは等々力警部が利彦、ならびに利彦に対する信乃や目賀博士の感情をよく知らないから言えるといいました。利彦は隙さえあれば妹の秋子から金を引き出そうとしていて、信乃たちが目を開かせて利彦を秋子に近寄らせないように気を配っていました。

利彦を殺害したときのアリバイについては微妙だといいます。今日でかける行き先ははっきりとしていますが、殺害時刻の夜七時半に戻ってこようと思えば戻ってこれます。しかもこの屋敷は広く、戦禍の応急処置はずさんで、野次馬や記者も入れるぐらいです。菊江は東劇を最後まで見なかったかもしれないし、東太郎はもっと早く帰ってきていたかもしれない、目賀博士と信乃も仕組まれていたことに気づき大急ぎで飛び出したからもっと早くに帰っていたかもしれない、華子や美禰子、利彦は夜八時すぎに到着しているから先に殺害して出かけたのかもしれない―――このように全員アリバイが不成立になってしまうのです。
ただ4日の夜フルートの音色がなっても英輔らしい姿は見当たらなかった。これはその男が東京ではなく4日の朝、金田一と同じ須磨明石にいたからだと金田一は話します。英輔らしき男は4日の朝9時半頃、おこまを探していたはずだから。そして金田一は須磨明石でわかったことを伝えます。玉虫元子爵の別荘でおこまという女性が利彦によって孕まされた、ただそれだけで終わるような話ではないとも。温室で発見した風神の像を見れば、台座の下の部分が切り取られていて、不揃いな並びになっています。誰かが下を輪切りにして、もう一度くっつけ直したので、ガタガタしています。

秋子に訪ねようと思えば代わりに信乃が来ました。そしてその指輪は確かに秋子が利彦に差し上げたものだときっぱりいいます。指輪がないことに気づいていたがそれを話すことは憚られた模様。信乃は偽電報が利彦だろうとわかっていた様子で、その理由も金の無心だろうと金田一の予想通りの答えでした。目賀博士はおおかた信乃と同じ内容ですが、玉虫元子爵の媒酌で秋子と夫婦関係になっていて、英輔の一周忌で発表する予定だったといいます。金に無欲で性欲が強いところを秋子の旦那にふさわしいと玉虫元子爵に認められた様子。
次は菊江に話を聞きます。秋子の指から指輪が亡くなっていたことについて、菊江はすぐに気がついた模様。そして同様に目賀博士と信乃も指輪がないことに気づいていたといいます。そして菊江もこういった偽電報は利彦がやってもおかしくないといい、利彦は屋敷の人間に腹を読まれている人間でした。玉虫元子爵は戦火で焼け野原になっても行き先は豊富でした。それでも椿邸にやってきたのは利彦を監視するためだったといいます。利彦は家を失うと秋子を頼って(=秋子からお金を巻き上げるために)椿邸に転がり込んできました。そして玉虫元子爵は利彦を秋子のそばにおいておくといくら金があっても足りないと口癖のように話していて、自分も家を失ったから椿邸にきたのです。

菊江は左の小指が一部欠けていて、それは戦争に向かう当時のいい人に送ったといいます。今思えば馬鹿なことをしたわねと、そして指がないのはもう一人いて、それが東太郎。東太郎は中指の半分と薬指の3分の2がかけていて、それは戦争で亡くしていると菊江はいいます。金田一は「指がかけていても暗闇でタイプライターを打てるものなのか」と菊江に聞きました。

abX方程式

天銀堂事件はそれから進捗が有りません。英輔をはじめとした多くの容疑者に刑事を貼り付けるわけにもいかず、ストップしている様子。そして金田一は椿邸の事件が起きてから容疑者の行動を洗ってみてはいかがかと等々力警部に提案します。金田一は「a=X,b=X,a=b」という方程式を話したうえで天銀堂事件の容疑者の1人が英輔ならば、容疑者の1人が英輔に似ていてもおかしくないのではと持論を伝え、等々力警部は大いに驚きます。替え玉を捕まえるならば、モニタージュ写真はうってつけ。そして英輔に変装する替え玉を使う場合は、その容疑者の1人を使えばいいだけで、姿を少しだけみせるなら問題ないと金田一は言います。この事件の解決と同時に天銀同事件も解決すると。

a=椿英輔
b=そっくりな男
X=天銀堂の犯人
椿英輔にそっくりな男が天銀堂の犯人ではないか

aである英輔はXに等しくないが、bであるそっくりな男はXに等しく天銀堂の犯人ではなかろうかただ金田一はそのそっくりな男(=天銀堂の犯人)は今回の椿邸の殺人事件の犯人の片棒を担いでいるも、その犯人の言うことを聞かなければならない秘密を握られているのではないかと話します。そうでなければ危険を冒して淡路でおこまを殺すなんてことはしないと。天銀堂事件をもう一度洗うことになりました。

翌日、金田一は出川刑事からの報告書を読みます。小夜子が死んでいるのは確実で、神戸の徴用先で青酸カリを呷って死亡。彼女の腹には妊娠四ヶ月の子どもがいました。ただ小夜子を孕ませた相手が誰なのかは身近な人も誰も知らない様子。辰五郎の妾のおたまの行方もわかっていないので分かり次第連絡しますとのこと。小夜子の妊娠、そしてその相手、なぜ胎児ごと自殺せねばならなかったのか―――これらに金田一はひどく興味を持っていました。

等々力警部からの連絡もあり、もう一度容疑者の身辺を洗ったところ、ここ2,3日で行方がわからない男が一人いました。その男は飯尾豊三郎といいました。当初は飯尾が最有力候補でしたがそこに英輔への密告状が届き、警察の視線はそちらに向かっていき飯尾は滑り落ちてしまいました。そして飯尾は英輔によく似ていました。

金田一は美禰子より借りたゲーテのウィルヘルム・マイステル(ヴィルヘルム・マイスターの修行時代)を読んでいました。気の弱い英輔はおおっぴらに犯人を明らかにするモノを残さず何かに託しているのではないか、わざわざこの本に遺書を挟んだということからもこの本になにかあるのだろうと思っているからです。ウィルヘルム・マイステル(ヴィルヘルム・マイスターの修行時代)を読む金田一の所に磯川警部と出川刑事から手紙が届き、中身を確認した金田一は興奮で震えています。出川刑事は辰五郎の妾のおたまをついに発見し、彼女の口からある重大な秘密を聞いたというのです。

第四の事件

手紙を読み終えた後、警察から金田一に電話が入りました。増上寺境内で殺人があったとのことです。そこに向かえば警官や新聞記者が慌ただしく、等々力警部の手招きで金田一は奥に向かいます。その死体は臓腑がはみ出て体中噛み下れていましたが、特に顔の損傷がひどく誰なのか区別がつかないほど。この死体はおそらく飯尾豊三郎ではないかと等々力警部は言います。飯尾は前科があり指紋を採ってあるので、死体の指紋が会えば飯尾だと言えると。検屍した医者に寄れば死後二日経過していて、死因は絞殺だと言います。顔は故意にぎちゃふちゃにされていました。

金田一は等々力警部に磯川警部から届いた手紙を見せます。それは三島東太郎のことで、三島省吾と妻との間に生まれた一子であるのは違いありません。三島省吾と英輔の間には親交がありました。三島省吾も妻も空襲ではなくなっており、東太郎も陸軍病院で既に死亡していました――――――――という報告でした。

ゆきんこ

この後事件はフルートの音色とともに解決します

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「悪魔が来りて笛を吹く」のネタバレ

何もかもがわかるのが最後の犯人の手紙なので、そこに行き着くまで長いです。ただ少ない登場人物の中でどう繋がっていくのか考えていくのがとても楽しい。そして原作よりも犯人をより不幸にしたNHK版は逆に凄い。

悪魔が来りて笛を吹くの犯人のネタバレ

玉虫元伯爵・新宮利彦・新宮秋子・おこま・飯尾豊三郎を殺した犯人は三島東太郎(=河村治雄)です。おこまのみ飯尾豊三郎が殺害しています。

これが悪魔が来りて笛を吹くの相関図だ!!

三島東太郎(本名:河村治雄)は新宮利彦(兄)と新宮秋子(妹)の近親相姦で生まれた子どもです。彼の体には父親の利彦が生まれ持つ火焔太鼓の痕が残っていました。生まれた治雄は玉虫元伯爵邸の庭師、河村辰五郎に引き取られます。辰五郎は金のなる木として治雄の存在を餌に玉虫元伯爵を揺すっていました。秋子が治雄を産み落とした際に一緒にいたのは玉虫元子爵、そして付き添いの信乃でした。二人は火焔太鼓の意味を知っていたのです。

治雄は自分の出生を餌に椿元子爵に近寄ります。妻の最大の不貞をバラされたくない椿元子爵は治雄に三人に手出ししないと誓わせ、死んだ友人の子供の名前を与えて自分の目が届く側に置きます。しかし自分の義兄と妻の禁忌の子供がのうのうと自宅にいることで椿元子爵は懊悩し、本当に事実なのか確かめに行き、そして正しいとわかり自殺するのです。遺書が治雄のことを書いています。

悪魔が来りて笛を吹くの犯人の動機

愛する人(小夜子)が自殺した原因である自分を産んだ両親を生かしておけなかったから(新宮利彦・秋子)&火焔太鼓を回収しにきたのを見られたから(玉虫元伯爵)&自分の出生を話したから(おこま)&口封じ(飯尾豊三郎)です。

金田一に全てを見破られた治雄は遺書を残してフルートを吹き、自殺します。椿元子爵が残した悪魔が来りて笛を吹くは、右手の中指と薬指がなくても演奏できる曲でした。

小夜子が自殺した理由

結婚を約束し子供をなした河村治雄と自分(小夜子)が異母兄妹だとわかったため。

畜生道は近親相姦の罪を犯した人間が行く地獄。おこまは治雄の肩に出来た火焔太鼓をみて彼の父親を把握し、それまでの態度を一変、娘の小夜子を近づけまいとします。おこまの態度の理由がわからない二人は、ますます関係を燃やし、ついに子供をなしてしまうのです。それは禁忌の子供でした。

「悪魔が来りて笛を吹く」まとめ

これが悪魔が来りて笛を吹くの相関図だ!!

やっぱり新宮利彦はクソ・オブ・ザ・ゲス!!!

さすが横溝正史ゲス野郎まとめで常に1位をとり続けて堂々の殿堂入りを果たした男だぜ。閉鎖的な空間の中で行われる事件のため、登場人物も少なく犯人も予想が付く人がいるかもしれませんが物語性が強く惹き込まれる内容になっています。復刻されているので気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。

浅田さん

まるで沢越家(※)のような四角い家系図だ

UnsplashAni Adigyozalyanが撮影した写真
Image by ha11ok from Pixabay
Image by Franz P. Sauerteig from Pixabay

悪魔が来りて笛を吹くはこちらからでも読めます

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