当ブログはプロモーションが含まれています 気になる!

【ネタバレあり】横溝正史・長編「悪霊島」を紹介

当ページのリンクには広告が含まれています。

「悪霊島」は金田一耕助シリーズの中では、岡山編最後の事件です。純粋な事件発生ではこの「悪霊島」が一番最後ではないでしょうか(病院坂は前編が昭和28年頃)。また前編・後編と話も長めで旧家同士のいがみ合い、血族のしがらみと島の掟、白骨死体など金田一耕助のお約束がこれでもか!と登場。市川崑監督・鹿賀丈史さん主演で「悪霊島」が映画化していますが、その時使用されたテーマ曲が後に差し替えられたのは有名な話。古谷一行さん主演の金田一耕助シリーズや、片岡鶴太郎さん主演の金田一耕助シリーズでもドラマ化しています。

悪霊島を読むならこちらから!

原作とかなり改変されているドラマ

本来は「結合双生児」と呼ぶのが正しいのですが、本編で「シャム双生児」と記載があるのでそちらに倣います。

目次

「悪霊島・上」のあらすじ

アメリカ帰りの億万長者から人捜しを依頼され、岡山を訪れた金田一耕助は、久し振りに会った磯川警部と旧交を温めた。だが、それも束の間、警部の話から金田一の尋ね人が謎の言葉を残して怪死したことを知る。さらに依頼人越智竜平が、出身地の刑部島に建設中の一大レジャー施設をめぐり、島の人々から反感を買っている事を知って、金田一は前途に不吉な事件の予兆を感じるが……!?

「悪霊島・上」のあらすじ

岡山編のフィナーレを飾る作品のため、解決済みの事件や名前がちょこちょこ登場します。昭和29年の「蜃気楼島の情熱」の「志賀泰三」や「獄門島」の「鬼頭早苗」など。早苗の名前が出ると金田一がどきっとするんですよね。事件は昭和42年6月24日から始まり、7月14日をもって解決します。あと磯川警部が映画「悪魔の手毬唄」の若山富三郎氏で固定されてしまってる人多いと思います。私もです。

登場人物作中の役割
金田一耕助私立探偵。竜平の依頼で刑部島に向かう。
磯川警部(磯川常次郎)岡山編金田一の相棒。細君・糸子と若くして死別で鰥夫。子供がいたらしい
越智竜平アメリカ帰りの刑部島出身の億万長者。巴と駆け落ち未遂の過去がある。「本家」と呼ばれる。
三津木五郎観光客。通称ヒッピー。
青木修三(青木春雄)シャム双生児のテープを残して転落して死んだ男。捜索願が出ていた。
刑部大膳刑部家当主。刑部島を取り仕切るボス。「錨屋」
刑部辰馬刑部村村長で大膳の甥。青木の捜索願を出していた
刑部守衛刑部神社神主。婿養子。二人目の被害者。
刑部巴大膳の双子の兄・天膳の孫娘で守衛の妻。通称「巴ご寮人」。竜平と駆け落ち未遂。
刑部真帆守衛と巴の娘で一卵性双生児。真面目で素直。
刑部片帆守衛と巴の娘で一卵性双生児。疑り深く島から脱出しようと考えている。
浅川はる市子。別名神降ろしの巫女。絞殺死体で発見される。最初の被害者。
越智吉太郎竜平の従兄弟。竜平を裏切り駆け落ちした二人の潜伏場所を大膳に密告する。大膳に恩義を感じている
荒木定吉薬の行商人。行方不明になった父親・清吉を探している
越智多年子竜平の叔母で家事のお局
松本克子竜平の秘書で刑部島の事業全てを行っている
妹尾家(神楽太夫)例大祭で呼ばれた神楽太夫組。20年前に若手の松若が行方不明になっている。

鵺が鳴く夜は恐ろしい

事件の始まりは昭和42年6月24日。話はアメリカ帰りの億万長者・越智竜平から部下の青木の行方を捜していてほしいという依頼の内容を磯川警部に話したことから始まります。6月23日に岡山に訪れて旧友の磯川警部と久しぶりに再会。そのとき、初めて磯川警部の身辺が明らかになります。奥さんの糸子が昭和22年に亡くなっていること、戦争の後遺症で腰痛を持ちつつ仕事第一で動いていたので再婚をしていないこと。今は兄の平太郎の家に厄介になっていることなど。湖泥で磯川警部夫人の話がちょっとでてきているので矛盾があるのは内緒。旧交を深めた磯川警部の話より、竜平に依頼された青木が5月20日に死んでいること、ダイニングメッセージとおぼしき謎のテープが残されていたことがわかります。そして金田一は青木が死んだ刑部島に渡りたいと磯川警部に話し、竜平より刑部大膳という相手に手紙を言付かっていた為だからと。
昭和二十九年に金田一たちが解決した「蜃気楼島の情熱」に登場した億万長者・志賀泰三氏は解決後にアメリカに渡り、竜平と出会って親交を深めます。そして竜平が志賀氏の紹介状と手土産を持って金田一の元を訪れたのです。

青木が死んだ「刑部島」は竜平の出身島でした。網元の息子の竜平が後を継がずにアメリカで成功して故郷に錦を飾る――――――という単純な話ではありませんでした。過疎化が進み若者がいない刑部島にレジャー施設を建設する計画を立てていて島民から賛否両論です。ですが、それは竜平が島民から受けた仕打ちをしれば致し方ない事だと事情を知る島民は話します。

昭和19年の戦争末期の刑部島、網元の息子の越智竜平と刑部神社の娘の刑部巴は愛し合っていましたが身分違いのため結ばれないと知り、駆け落ちしました。これにぶち切れたのが巴の大叔父・刑部大膳で、島民総出で二人の行方を捜させます。竜平は当時金が無く従兄弟の吉太郎に金を無心する手紙を書きましたが、手紙を受け取った吉太郎は竜平を裏切り竜平と巴がいる場所を大膳に密告します。二人は丹波の奥の温泉宿に隠れていたのを発見され巴は連れ戻されて、竜平は何故か届いた赤紙で戦争に向かいます。竜平を密告した吉太郎は刑部家の一門郎党に加えて貰えましたが巴は貰えなかった
竜平は網元の長男で本来なら赤紙が来ない立場なのに召集令状が届いた、それは刑部島を支配する刑部神社の刑部大膳が手を回したに違いないと当時から専らの噂でした。そして戦争が終わり昭和23年頃帰ってきた竜平の目の前には巴と婿養子・守衛の姿が。このときの竜平の心境は如何ばかりでしょう。竜平にとって刑部大膳は不俱戴天の怨敵。なのに何故手紙を書いたのだろうと考えます。一方で刑部島の竜平の邸宅は完成していて彼の伯母・越智多年子が家事を取り仕切って動いてます。

そして岡山の港町で6月19日の夜に浅川はるという巫女が絞殺されていました。彼女が誰かに残した手紙は残っています。その中には彼女は産婆もしていて、とある誰かの出産を手伝ったこと、誰かをずっと揺すったことなどが書かれていました。浅川はるの預金通帳や箪笥の中の隠し貯金からみて脅迫していたのは確定のようです。彼女が殺された日は刑部家の人間が検診のため港町を訪れていたので、金田一たちは刑部家の誰かの犯行かとにらみます。

刑部島

7月1日。刑部島に着いた金田一は島を散策します。磯川警部に教えてもらった落人の淵という断崖絶壁を見たかったためです。恐ろしい絶壁に震えて後ずさったとき、鋭い威嚇の視線を浴びて振り向けば竜平の従兄弟の越智吉太郎が金田一を睨んでいました。外敵を威嚇する目の吉太郎に金田一は微笑みながら彼の警戒を解きつつ、竜平から預かった手紙を刑部大膳に渡してほしいとお使いを依頼します。吉太郎は警戒しつつ依頼を承知しますが、疑わしさと打ち消す言葉を漏らしながら、その場を後にしました。この手紙の内容は金田一が逗留するというものです。

その夜、大膳に宴を振る舞われながら、金田一と磯川警部は刑部家が元来双子が生まれやすい家系だと知ります。大膳にも一卵性双生児の兄がいますが五十年以上前に事故死(釣りの船が転覆)していました。その孫娘の巴の娘の片帆と真帆も一卵性双生児です。大膳は齢八十歳になる老人ですが肉体的精神的にも生き生きとしていました。同時に巴ご寮人も年齢より圧倒的に若く三十代に見える美しさでした。
大膳は刑部島の由来も語ります。源平合戦の屋島の戦いからはぐれた平家の一人、平刑部幸盛という武将が一族郎党六人を連れて妻恋島に乗り込みます。妻恋島の妻恋神社の宮司の娘に日奈子という美女がいて幸盛は彼女と結婚し、他の郎党も相手を見つけてこの島で暮らします。その後に生まれた子供達は島の人間とは違うが、平家性と名乗らせるわけにも行かないので、役職の刑部(ぎょうぶ)を刑部(おさかべ)と読ませた模様。また元々この島の人間は越智家しかいなかったので、竜平らの家は「本家」と呼ばれる事もあるのです。平家の血脈の娘と島民の息子では身分違いも甚だしいと大膳が怒ったのはこのためでした。

三津木五郎

昭和42年7月2日。刑部島に観光客でやってきた彼は、巴親子をカメラで写真にしつつ金田一と散策します。終戦の年に生まれた彼ですが、両親は既に逝去です。五郎は浅川が死ぬ数日前(6月15日午後14時頃)に彼女の家を訪問した形式があり、浅川が酷く驚いた声を上げていたと近所の主婦の証言で取れています。その後も金田一は五郎の身の上を根掘り葉掘り聞きましたが、五郎は大膳も貴方と同じように色々聞いてきたけど珍しいのかと笑っていました。
観光客の行商人・荒木定吉とも刑部家の風呂で知り合います。この島で来客をもてなすだけの部屋も屋敷もあるのは刑部家ぐらいで、金田一を始め五郎や定吉も刑部家に泊まっています。

大膳と懇親を深める中、岡山から戻ってきた巴の旦那の刑部守衛を紹介されます。守衛は婿養子ですが巴より十歳以上年上でどこか傲慢な節があり、自分が刑部神社の神主だからと村長の辰馬も見下しているのがありありと見えます。そして巴以外に二人の不倫相手がいるのは周知の事実でした。竜平は東京のホテルで6月29日に金田一と会っていますが、そのときに守衛もいたのです。ただ竜平はそのことを語りませんでした。守衛は竜平が寄進したご神体の黄金の矢を大膳たちに見せます。

刑部神社の例大祭は7月7日。島から本土にあがって暮らしていた越智家の人間が、竜平の根回しで一週間近く有休をもらい連なって刑部島に戻ってくるため、刑部島は毎日がお祭り騒ぎです。ちなみに竜平が帰ってきたのが7月5日で、この日が一番盛り上がっています。竜平のもと、帰ってきた家族は三十二家族で、百二十人ぐらい。

荒木家の行方不明者

7月4日、磯川警部らと金田一は島の探索と情報集めに邁進します。そんな折、五郎と定吉は社務所周りにいて彼らと合流。定吉がこの島に来た理由が、行方不明になった薬売りの行商人の父親・荒木清吉を探しに来たという事がわかります。父親が蒸発したのは今から9年前の昭和33年6月28日朝で、母親も捜索願を出したが警察は全く相手にしてくれなかったことのこと。音沙汰がないため、母は清吉が他に女ができて駆け落ちしたのではないかと何度も考えたようですが、金目が家にあるためその線は薄いと考え直します。清吉の写真をみれば筋肉隆々とした細マッシブのいい男です。

昭和42年7月5日午後15時頃、竜平が刑部島に入島しました。それより少し早い午前の便で警察が、浅川はるの目撃者の川島ミヨを連れてきました。普通の便船だったので他の人間も多くいましたが、珍しいのが神楽太夫のご一行。彼らは今度の例大祭で神楽舞を舞います。しかし長老株の男性が私服の警察を捕まえて、この島で20年前に神楽太夫が蒸発したのだが知らないかと聞いてきます。流石の警察も答えに窮しますが、長老の家族が見つけてこの人は頭が弱いから行ったこと無視してほしい、といいながら彼を連れて行きます。そして警察は定吉の父親の蒸発と、神楽太夫の蒸発、浅川はると青木修三の事件などと相互に確認し、照合しに向かいます。川島ミヨが痺れを切らして早く帰りたいけどいつまで待ってればいいのかと警察に当たります。そりゃそうだ。

7月5日午後、島はより活発になります。祭りが行われることで町民総出で浮かれていて、定吉と五郎は巴に奥まで案内されてお話を聞きます。巴は、清吉と会ったことがあるといい、よく似た身体と話して蒸発したことを悲しくおもう。また島がひどく閉鎖的で新しい文化が入ってくることを酷く嘆き、五郎のように新しい時代の若者が娘の真帆たちを教育してほしいと述べて頭を下げました。
警察も平服に法被を着ているとふつうのあんちゃんモードでした。五郎は話しかけた相手が警察だと知らず馴れ馴れしく会話を続けます。その姿を川島ミヨがこっそり確認しましたが、彼女は合っているとも違っているとも曖昧な返事を返して、本土の自分の家へと戻っていきました。

億万長者の大富豪、上陸

午後15時頃に竜平が島民の大歓迎を受けて刑部島にやってきます。彼の左右には秘書の松本克子と、叔母の越智多年子がいました。竜平は奢ることも見下すこともなく、島民と握手していました。その様子を興奮しがちに見つめる三津木五郎と、ふうんと見つめる荒木定吉。両者は正反対の態度です。
竜平は金田一の姿を見つけると、群衆をかき分けて彼の所に向かい、挨拶します。金田一も挨拶した後、磯川警部を紹介。竜平の食事の誘いを断りますが竜平は明日夕方迎えを出すと何が何でも金田一を誘います。金田一が了承すると、一人の青年の声が。

再び群衆をかきわけ、まるで直訴する農民のように竜平の所にやってきたのは五郎。喧噪にまぎれて金田一は聞こえませんでしたが、あとで竜平から聞けばこのとき五郎は竜平に向かって「お父さん」と呼んだそうです。
その頃、西の海岸で一艘のみのおちょろ舟のなかで吉太郎が網を打っていました。花火があがるとそれを一度見たっきり、振り返らず我関せずとばかりに網を打ち、黙々と網にかかる食えない魚を採っていました。まるで全く興味が無いとアピールしているように。(網を打つ=網を投げて魚を採る方法)

おちょろ舟とは、風待ち・潮待ちのために停泊している船の乗組員を相手にする女たちを乗せた小舟のことです。

おちょろ舟の女たち「色彩の魔術師 緑川洋一」

妹尾家の行方不明者

7月5日朝10時頃、刑部島に上陸した神楽太夫の一団は大膳の屋敷にやってきます。彼らはかねてより刑部大膳と知り合いでした。一行が案内されたのは金田一や磯川警部が泊まっていた部屋で、先客があるのではと首を傾げる一団に、大膳はここにいる客人は近々この家を出て行くから構わないと、金田一に話を付ける予定です。なおこの神楽太夫たちは全員妹尾という名字で、舞いという体力を酷使する仕事と普段の仕事の農業で、全員肉体がとても頑強であり、最年長の四郎兵衛ですら年齢にそぐわないマッシブです。大膳は四郎兵衛に後で話があるから、荷物を出したら来てほしいと四郎兵衛を呼びました。

四郎兵衛と大膳は、互いに年を取ったと話すと、行方不明になった「松若」―――20年以上前に行方不明になった神楽太夫―――について色々尋ねます。彼が行方不明になった当時大膳にお世話になったが、やはり死体もでてこなければ死んだと認められません。死んだと解れば諦めも付くし忘れていくでしょうが、行方不明だからこそ希望を持ってしまう。そこに洋服を着た二人の青年が四郎兵衛の所にやってきて時間まで祭りを見に行くと伝えて出て行きます。彼らは誠と勇といい、松若の忘れ形見。その松若は昭和23年の刑部島の祭りで行方不明になっています。
正確にいえば、誠と勇の子供もいてお照という細君がいる松若。昭和23年の神楽太夫の祭りを境に腑抜けになってしまい農業に身が入らないどころか、夫婦の営みも一週間以上行われなかった模様です。やっと精気を取り戻して神楽太夫の稽古もやりだし、夫婦の軌道も元になったと思いきや、何か身のうちにあるらしく7月~9月まで数度いなくなっては戻ってくる日々が続いた矢先。10月に行方不明になってしまったのです。

大膳はこの話を二度聞いていたらしくうんざりした顔でした。四郎兵衛は下手に出ながら、話し続けます。松若がこの方面の舟に乗っている目撃者がいたが、自分達にこの辺りの親戚はいない事など。当時の宿屋は錨屋と呼ばれたこの刑部家ぐらいだが、大膳はしらないと首を横に振ります。

次世代の子供たち

誠と勇は祭りに行かず、刑部神社の方に向かいます。途中、金田一と磯川警部に会い、神社の道を教えてもらい向かいます。金田一たちは彼ら兄弟をみて露天商人だと思い、追求しませんでした。誠と勇の兄弟は父親の仇取りにきたです。警察に教えてもらった神社の裏手の千畳敷(平らに広がった地形を畳み千枚と称した地名)に向かいます。二人が四郎兵衛に話さなかったのは、彼の年齢を考えてのことです。松若が失踪した後、母親のお照も兄弟二人をおいて蒸発。残された二人を育てたのは祖父の四郎兵衛であり、四郎兵衛は兄弟に「お前達の父親は女に拐かされた末に殺された」と口酸っぱく言い続けたようです。この「千畳敷」は失踪する前の松若が兄の誠に「千畳敷にいっていた」と寝るときに話してくれたもの。松若はすまないすまないと家族に謝り続けていました。

千畳敷に入ろうとしたとき、人影を察知した兄弟はすぐ側に隠れます。すると真帆と片帆の双子の姉妹が話しながらやってきました。定吉の行方不明の父親の話を聞いて思い当たる節があると話す片帆に、真帆はえっと驚きます。片帆は人形遣いのことを言うも真帆が首を傾げたので、しらばっくれたのか忘れたのかと、片帆が人形遣いの事を話します。
今から7~8年前のこと、淡路からやってきた人形師が巡礼お鶴という浄瑠璃を演じた際に、見ていた巴と真帆は涙を流して泣いていましたが片帆は泣きませんでした。そして人形師は一晩錨屋に泊まっていった半年後に、人形師がこの島で蒸発したために警察が確認しに来たと片帆が話します。ただ人形師を泊めた翌日に、片帆達は人形師を舟まで見送った記憶があるため。そのうえあんな重いからくり箱を3つも持っていたら怪しまれると真帆は言います。
しかし疑り深い片帆はからくりを締まって洋服で来たり、港では誰も確認していないとザルな確認を指摘したうえで、人形師はこの島に再びやってきて行方不明になった、途中で家族が失踪届を出したのだと真帆に言います。その上で片帆は、こんな島にいたくないから、さっさと本土に逃げると真帆に打ち明けました。どこにいくか知らないが今日のうちに島から逃げる、もし誰かに話したら七生まで祟ると真帆に言い放った片帆は千畳敷の入り口に向かい、真帆も後を追います。二人の姿が見えなくなったあとで誠たちが出てきますが真っ青でした。被害者が一人ではなく二人になったからです

7月6日お昼過ぎ。金田一は吉太郎の船頭で大膳とおちょろ舟にのって、刑部島を一周しています。吉太郎は、大膳の斡旋で食用にならない魚を捕って水島コンビナートに売るという仕事にありつけ、おかげで刑部島を捨てずに働けると大膳に並々ならぬ恩義を感じています。そのため越智家の反対勢力の刑部家に服従し、じいやと呼ばれながら刑部神社に献身的な奉公をしています。この生き方に関して吉太郎は、自分にどういう生き方が出来たのだろう、常に親戚連中から従兄弟の竜平と比べられ月とすっぽんの扱いされ、竜平は器量も男前なのに自分はずんぐりみっともないと卑下しています。ただすっぽんは食らいついたら離さない、と並々ならぬ思いがあるようです。
ちなみに舟一周は磯川警部も誘われましたが、自分は部屋で神輿を見ているだけでよいと断りました。神楽太夫に行方不明の件を訪ねる予定です。帰ってくるのは夕方の17時ぐらい。吉太郎の船頭で大膳から刑部島の歴史を少し伺った後、少し離れた所に本当の刑部神社がありました。刑部神社に行くところにはサワガニのような蟹が多数船に乗り込んできました。

巴の不義の子?

島一周から戻った金田一ですが、磯川警部は神楽太夫の一行と外に出かけてしまっていました。なお磯川警部はこの錨屋に厄介になるつもりらしく、竜平の屋敷には金田一だけで向かうことになります。昨日迎えをよこすという言葉の通り、秘書の松本克子が車に待っていました。
竜平の屋敷に案内され、お酒も用意。竜平は多年子たちを下がらせ二人っきりになると、五郎について話し始めました。磯川警部が浅川はる殺害事件の重要参考人として何かを知ってるために目をつけていることを話し、金田一の意見を仰ごうとします。しかし金田一は沈黙を貫き今の推理を伝えるつもりはありませんでした。

歓談を終え、竜平は多年子に金田一の寝床を準備するよう伝え、自分は紋付袴を着てこれから刑部神社に向かうと話します。一方で金田一は宛がわれた客間で、手帳に一日の内容を書いたのち、五郎が竜平をお父さんと読んだ理由と背景について考えます。松蔵から聞いた、竜平と巴の駆け落ちは昭和19年、そして五郎は戦争が終わる直前に生まれたと自供。それらを掛け合わせれば、駆け落ちした昭和19年に巴が出産していて、その子供が五郎という可能性が生まれるでしょう。しかし誰も巴があの当時子供を産み落としたと話していないし、生まれた子供は大膳によっては忌み子も当然。大膳が竜平を憎んでいたとしても、巴を堕胎させることはしない筈。もし出産するなら隠して行うのできっと島ではなく本土。単語を並べて思考に耽る金田一は浅川はるの存在を思い出します。浅川はるは今の長屋に住むまでの足取りが一切解りません。彼女は産婆だったのかもしれない、三津木夫人が子供がほしいと頼んでいたので、巴が産んだ子供を抱き上げ三津木夫人に養子として渡したのではないでしょうか。その事実が、手紙に書いてあったことかもしれないと金田一は根拠のない持論を考えます。証拠も少なく金田一の空想がほとんどを占めますが、金田一はこの持論に執着します。

推理に耽る金田一を呼びつけたのは、多年子と松蔵の声でした。竜平からすぐに刑部神社に来てほしいとのことで、神社が火事になっていると知らせが入ります。同時に人が殺されたとも。ただ火事はボヤで住んでおりメインは人殺しの方でした。多年子は、竜平がまた巻き込まれて後ろ指を指されているのではないかと心配し、金田一に竜平を頼むと頭を下げました。

二人目の被害者

18時頃の刑部神社。宮司の守衛が祝詞を読み上げ、周囲に巫女姿の巴と真帆、片帆、有力者数名が座っていました。しかし片帆の姿は見当たらず。なお神楽太夫が舞う備中神楽は無形文化財に指定されており、中でも最年長(74歳)の妹尾四郎兵衛は備中神楽の巨匠。子々孫々まで備中神楽を継がせるつもりだった彼の息子の松若が蒸発したことが痛恨事でいまなお諦めきれないでいます。

小休憩を挟んだ19時頃。片帆の姿がないと守衛は娘の真帆を問い詰めます。真帆は涙を流しながら島を出て行ったと話しますが、その本当の理由は決して話しませんでした。巴が守衛を宥めなら真帆に聞くと、真帆は片帆は昔から神社のおつとめを嫌がっていたから、と答えます。反抗的な片帆が神社の娘という立場を嫌い、なにかと嫌がっていたのは守衛も巴も知っていました。仕方なく巴と真帆だけで巫女の舞いを踊り、神楽太夫に引き継ぎます。

夜20時頃の刑部神社の境内はかがり火に火が付き、神輿が戻ってきたり露天商で販売が始まりとひときわ賑やかでした。神輿が納められると、神楽太夫の神楽が始まりました。後ろの垂れ幕から火が移り、火事が発生。幸い誠や勇、松蔵らのバケツリレーですぐに鎮火しました。次いで自動車でやってきた竜平は、磯川警部に巴がどこにいるか尋ねます。磯川警部は巴なら神楽殿にいていまボヤ騒ぎがあったところだと竜平に伝えますが、竜平は磯川警部に一緒に来てほしいと頼みます。その声が尋常ならざる響きだったので磯川警部も竜平に同行し、神楽殿に入ります。左に向かい社務所に行けば、そこにはご神体の黄金の矢で背面から胸元まで串刺しにされた刑部神社の宮司、刑部守衛の死体がありました。

刑部神社に向かう途中の金田一は坂の下から登ってきた大膳を見つけ、克子に話して彼を自動車に入れます。火事が見えたが、と理解できない大膳に、金田一は自分も克子達から話を聞いた程度で、火事が起きて誰かが死んだということしかわからない。克子にもう少し詳しく聞けば、彼女は竜平を送ってきた時に火事があったがボヤで済んだ、そして磯川警部と一緒に社務所に向かって死体を発見した、その死体は宮司の守衛で、大膳は酷く驚いていました。またこれらは刑部家を憎む竜平の仕業だとと村長の刑部辰馬が騒いでいると。
一方、神社の境内では辰馬が竜平を責め立てます。竜平は何を言っても言い訳にしか聞こえないだろうと口を紡ぎます。それをいいことに辰馬は増長し、竜平が守衛を殺したと周囲に大声で喋り始めるとき、竜平が磯川警部にあれを止めてほしいと言いかけます。その前に松蔵がそれは嘘だと反論。松蔵の言葉を皮切りに竜平を信じる島民らが辰馬に一斉で袋叩きのように責め立てます。守衛は殺されたのか、と聞く松蔵の質問に竜平は殺されたのは守衛で間違いないといい、まだ何もわからないのに村長もはしたないと辰馬と松蔵双方に釘を刺しました。
磯川警部と竜平が殺害現場に向かう途中、巴に頼まれた五郎が何があったのか尋ねます。「お母さん」と言っていることから、五郎は自分を竜平と巴の子供だと確信している様子(でもDNA鑑定で一発でバレるんですが)。そして克子に連れてこられた金田一も合流します。

犯人は守衛への強い憎悪をもつもの

検屍の医者や県警本部がくるまで現場を現状維持するようつとめます。見ればみるほど神聖な場所で天神ヒゲの守衛が黄金の矢で串刺しにされているのが哀れで仕方ないと思うほど。この島に医者はおらず、過疎化でみんな島から出て行ってしまい、そのため検屍は警察がくるまでお預けとなると話します。
矢を少し刺しただけで殺せるのに、強い力で刺し貫いているのは何故だろうかと金田一は磯川警部と話し、彼らがかつて解決した獄門島や悪魔の手鞠歌のように、見立てた殺人なのかと思います。しかし竜平に聞いてみれば、この島で矢を用いた逸話なんて一切無いというのでこの線は外します。そしてこの部屋にあるくぐり戸には鍵がかかっていないため、厳格な密室殺人ではありません。ただ、守衛が気を許しているのがわかるので、加害者は守衛の親しい人間ではないかと自ずと絞られていきます。

巴と真帆、大膳が守衛の死体を見たいと言い、磯川警部は三人で一緒に見た方がいいと三人を連れてきます。三者三様の対応で大膳は目を広げ、真帆は絶叫、巴は取り乱します。特に巴は辰馬が竜平が犯人と言いふらしているのを耳にしているため、竜平が犯人なんて嘘、嘘、嘘よっと叫びました。大膳は真帆に巴を連れて部屋に戻るように言うと、金田一達に片帆が島を出たことを伝え、今日は忙しかったから二人とも解らなかったと。そして死んだ守衛が兼務する神社に一人ずつ女性を囲い、ご寮人と呼ばせていると大膳が金田一たちに話します。倉敷と玉島。彼女たちは高校3年間それぞれの神社に預けられていて、片帆は玉島でした。そこにいるだろうと玉島に電話したところ、片帆は来ていないと返事が来たのです。また大膳の電話により、玉島と倉式にいる愛人二人も刑部島にやってくる模様。

事情聴取

7月7日午前0時。竜平の汽艇(ランチ)で捜査の大部隊が刑部神社に上陸します。このランチには報道各所も乗っていたため、すぐに全国報道されて話題になります。事件当日、無関係の露天商人以外の境内にいた島民は容疑者として足止めされていました(女性を除く)。数個のグループに分割されて一斉に事情聴取を行っています。最初のグループは刑部家、次に定吉と五郎、越智家、竜平と克子、神楽太夫の計5グループです。かがり火の薪は吉太郎がせっせとくべに行っていますが越智家にとっては裏切り者も同然、ほぼ村八分のような扱いで吉太郎がいるときは誰も言葉を発しません。吉太郎は祭りの間この神社の納屋に寝泊まりし、犬のように這いずり回っていると松蔵は信吉に話します。巴を抱いているんだろうと松蔵は思いますが、巴も趣味が悪いと感じているようです。

四郎兵衛は宮司が死んでしまっては今年の神楽もおしまいだと思っていますが、実際は別のことを考えてました。同じ一門の平作や徳兵衛らは四郎兵衛と同じ、松若を攫ったのは守衛と巴夫妻で違いなく、巴が松若を散々オモチャにして守衛が嫉妬で松若を殺した―――この筋書きは違いないと、守衛夫妻と出会って確信したと話します。巴の姿は美しいけど中身は腐っている、血も腐っていると。松若の敵を取る前に先に誰かに殺されたのが悔しいと平作達は話します。そして磯川警部がやおら探りを入れてきたが白を切り通したとも。誠の姿がなかったので勇は千畳敷にいるから迎えに行ってくれば、誠は泥で汚れていました。彼は転んだといいますが、果たして……?

警察は死体を下ろし磯川警部たちから当時の情報を聞き取ります。そして竜平が怪しいと疑いますが、火事のボヤ騒ぎが7月6日夜20時20分頃で、竜平が屋敷を出たのは20時30分頃で金田一が時計を見ています。そして神社の石段を登っていく竜平を磯川警部が目撃したのが20時36分です。磯川警部は岡山県警と話して今回の事件の指揮を執ると金田一に伝えました。
医師の検屍の結果、守衛の死体の死亡推定時刻は今から四時間~五時間前です。このときは7月7日午前1時なので、犯行時刻は7月6日夜20時~21時頃だと思われます。

7月7日午前1時から警察が聞き取りを開始し、最後の定吉と五郎にとりかかるときには朝露が見えるほどでした。一方、聞き取りを待っていた吉太郎ですが誰にも呼ばれることなくそのまま納屋で眠ってしまい、起きたのは朝5時45分でした。彼の格好は6日におちょろ舟で大膳と金田一を接待したときの衣装のままで、黒いなめし革の上下つなぎのオーバーオールのうえに刑部神社の印ばんてんを着込んだもの。
吉太郎は長靴を履いて、納屋を出て神楽殿に向かわずにコケが生えた石段を降りてきます。なおその一番下に誰かが滑ってこけたような跡がありましたが、無視。石段を降りると龕(がん)があり千畳敷が見えますが、そこを通り抜けて刑部神社の小道から峠に駆け出します。30分ぐらいしたのち、吉太郎は村から離れた自分の家につき、入ります。家の中は片付いていて、吉太郎は散弾銃を取り出し、弾をこめて弾帯を腰に巻きます。彼は外に出て近くの谷(隠亡谷)に向かっていきます。吉太郎にとっては警察よりも大膳の命令が優先、絶対なのです。

 石窟家屋壁面に、仏像仏具を納めるために設けたくぼみ。また、仏壇厨子 (ずし) にもいう。仏龕 (ぶつがん) 。

龕(がん)とは?―コトバンク https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E9%BE%95/

「悪霊島・下」のあらすじ

金田一耕助の不吉な予感は的中した―――――。彼の依頼人である刑部島出身の大富豪越智竜平が、島に凱旋帰郷した直後、恐るべき殺人事件が発生したのだ。まず、刑部神社の祭礼の夜、宮司が何者かに刺殺され、続いて宮司の双生児の娘の一人が、人里離れた隠亡谷で絞殺死体となって発見された。事件解決に向けて、金田一と磯川警部は手がかりをつかむべく件名に島内を探索し始めるが……!?巨匠が最後に綴った、記念碑的作品!!

「悪霊島・下」のあらすじ
場人物作中の役割
金田一耕助私立探偵。
磯川警部岡山編金田一の相棒。
越智竜平アメリカ帰りの刑部島出身の億万長者。「本家」と呼ばれる。
三津木五郎観光客。竜平と巴の子供と自称。磯川警部の子供
青木修三(青木春雄)シャム双生児のテープを残して転落した死んだ男。
刑部大膳刑部神社宮司。刑部島を取り仕切るボス。「錨屋」
刑部辰馬刑部村村長で大膳の甥。
刑部守衛刑部神社神主。婿養子。二人目の被害者。
刑部巴守衛の妻。通称「巴ご寮人」。女郎蜘蛛。
刑部真帆守衛と巴の娘で一卵性双生児。真面目で素直。
刑部片帆守衛と巴の娘で一卵性双生児。三人目の被害者。
浅川はる巫女で産婆。最初の被害者。
越智吉太郎竜平の従兄弟。竜平への憎悪が強い
荒木定吉9年前に行方不明になった父親を探しに来た
妹尾家(神楽太夫)20年前に行方不明になった仲間を探しに来た
太郎丸&次郎丸腰が繋がったシャム双生児。白骨死体。竜平と巴の子供

三人目の被害者

散弾銃と弾帯を巻いて完全装備の吉太郎が向かったのは隠亡谷という危険な谷。ここは獰猛な野生動物が住み、島民は滅多に近づきません。そこの近くに住んでいるのが吉太郎です。吉太郎は道を降りて谷に入ると、阿修羅の名前を塩辛声で呼びます。阿修羅というのは捨てられて野犬化した飼い犬のこと。彼の大声が老木に反芻すると数十羽の鴉ががあがあと鳴いて空を飛んでいきます。吉太郎は阿修羅が動物の血肉を咥えているのを知っているので、注意深く周囲を見ながら叫んで威嚇すると一匹の阿修羅に足下を掬われて殺されかけますが機転で助かります。阿修羅は兎の肉かなにかを咥えていて口元は血でいっぱいでした。
その阿修羅を殺したのち、吉太郎は動物にしては量が多いようなと感じ、その在処を探しに周囲を歩きます。石と石の間におびただしい数の鴉が鳴いて集まっていました。それを覗いた吉太郎は、普通なら目を背けるであろうおぞましいものを凝視していました。吉太郎は連絡しなければいけないと感じ、戻っていくと同時にこれ以上あれをむごくついばませるのはごめんだと空に数発発砲。鴉たちを飛ばすのもありますが、誰かに気づかせる意味もありました。

社務所に急ごしらえに作られた捜査本部に、吉太郎の隠亡谷からの銃声が届いたのは7月7日午前7時50分。その時も聞き取りは続けられており、五郎の聞き取りのことでした。吉太郎の銃声を聞いてうとうとしていた警察たちは一気に目が覚めます。そして大膳も降りてきて、吉太郎がああも銃を撃つのは危険を意味しているのではと警察を向かわせてほしいと話します。警察を向かわせてから数十分後、今度は松蔵がやってきて金田一や磯川警部に急いで隠亡谷にきてほしいと要請します。―――阿修羅が人をかみ殺したと。

刑部家にきた警察の医師が検屍に向かっていると松蔵の言葉を聞き、金田一たちは急いで谷に向かいます。松蔵の案内で谷につけば、石の上でついばまれた死体の検屍が。見つめる大膳に、金田一はこの死体は島に行くと家を出た刑部片帆だと大膳に確認します。大膳は人目を忍んでこの近くを歩いていたところを阿修羅にかみ殺されたと述べますが、医師の見解は違いました。片帆の死因は絞殺、したがって彼女は殺害されたのです。

医師が残っていなければ片帆は阿修羅にかみ殺された事故死と片付けられていたでしょう。彼は、死体の至る所に擦過傷があり、阿修羅が引きずってきたのではないかと話し、本当の殺害現場はここではない可能性があると伝えます。死亡推定時刻は今の7日朝9時から35時間~36時間前、7月5日の夜21時~22時頃だと医師は答えました。
片帆を最後に見たのは真帆でしたが、大膳はショックで疲れてしまってて、代わりに辰馬がその時の状況について説明します。流石に真っ昼間に出て行くことはしないだろうから、夜に出て行ったのだろうが、直後に雷雨が降り出したため追いかけるのをやめたと。なお磯川警部は徹夜&今回の事件に入れ込んでいることもあり、警察は自分の意見を話すのはタブーをされているのに自分の見解を話していました。金田一もさすがに疲れているから休んだ方がいいと話します。

次いで五郎から片帆が殺された5日の夜、定吉と峠を散歩中に雷雨が降ってずぶ濡れになりましたが、雷がピカッと光ったときになにか動くモノを見たと証言が出ます。定吉にも聞けば、菅笠を被って蓑を背負った人間で、下半身は草むらに隠れていて男女の区別が付きませんでした。それを聞いた島民の多くは身の毛がよだつ恐怖を覚えます。彼らは刑部神社の社務所に笠と蓑が掛かっていて、今もそれがあることを知っているからです。

警察の捜査の結果。片帆の殺害現場は谷からもう少しいった隠し道の先の隠亡谷の河原でした。片帆の遺留品が多数落ちていました。6日から隠亡谷の鴉がやおら鳴いていることに大膳が不思議に思って吉太郎に調査を向かわせなければ、吉太郎がきっちり散弾銃で対処できる人間でなければ、片帆の死骸は発見されず骨だけになって、行方不明のまま本土で探していたかもしれません。金田一はその事実に気づき震え上がりました。
社務所にある蓑と菅笠はぐっしょり濡れていますが、これは先日の神社のボヤ騒ぎの際、吉太郎が水で濡らして消火作業にあたった為だと磯川警部は話します。残りの二組の蓑と笠は大膳と金田一が島一周ぶらり旅で使用したものです。

骨と双生児

金田一は片帆の死体がもし誰にも発見されず骨だけになった後に、犯人が処分する可能性を考えます。骨だけになれば女性でも可能です。そうすれば片帆は永遠に蒸発した行方不明者扱いになります。「蒸発」というキーワードからこの島で失踪した三人の男性のことを考えます。同じように殺されて骨だけになった後に島のどこかに埋められたら?
青木のテープの言葉を思い出すと、「この島には悪霊が取り憑いている」「身体がくっついた双子」「腰の所で骨と骨がくっついた双子」と言う内容。元来シャム双生児というのは生まれてもすぐに死んでしまうケースが多めと産婦人科医から聞いた事を思い出します。そして青木は専門医でもないのにどうして「腰の所で骨と骨がくっついた」とわかったのは、そのシャム双生児は既に亡くなっていて、とうに白骨化していて青木はそれを見たのではないのかと金田一は考えます。しかしその件と失踪者3名の繋がりがわからず、金田一は気を揉みます。

片帆の遺留品の財布には、明らかに古い小銭がありました。警察はこの島にはもう一つの古い神社があるのではないかと考えます。河原のほうでざわめきが走り、そちらに目を向けると、守衛の二人の愛人と、しがみついて泣く真帆、悠然と佇む巴の四人の女性の姿がありました。金田一は巴の姿に言いようのない恐怖を感じます。

鵺の鳴く夜に気をつけろ

悪夢を見た金田一は寝覚めが悪いと不服。そこに多年子が様子を見にやってきて、竜平も酷くうなされていたから二人とも疲れているとお風呂に入ることを促します。その前に金田一は多年子に竜平と巴の駆け落ちについて詳しく尋ねます。二人が恋仲の事実に気づいていたのは多年子ぐらいでした。密会場所は神社の裏手の千畳敷の側にある七人塚で、密会の合図はトラツグミの声。これは竜平が決めた合図で、平家物語では鵺の声だとロマンティックに話しました。
金田一は多年子に、駆け落ちの事を聞く理由は二人の間に子供が生まれていないかと確認するためでした。昭和20年6月に本土に疎開にいくと大膳が巴、護衛に吉太郎を連れて向かった事があり、島民の多くは巴の出産だろうと陰口を叩いていました。昭和20年6月生まれだと五郎も話していたため、時期はぴったり合いました。大膳たちが戻ってきたのは終戦の一週間後、昭和20年8月23日頃です。

金田一は竜平邸の風呂に入りながら、多年子から聞いた情報を脳内でまとめていきます。おそらく巴が産んだ男の子を誰かに里子に出し、その先が三津木夫婦でした。手伝った産婆は現状わからないが、金田一は浅川はるだと確信しています。しかし磯川警部にあてた手紙に不審な箇所があり、嬰児斡旋という事実が「その秘密を種にしてまで生きてきた業の深さ」に当てはまるのか、それだけで多額のお金を揺すれるのか甚だ疑問視。「いまにだれかが妾を殺しにくるのではないかと思えば、生きている空もございません」という一節が金田一を強く焚きつけます。嬰児斡旋だけで多くの金を揺すり誰かに狙われているのは明らかにおかしく、きっと自分達の知らない何かがあると金田一は結論づけます。
ただ青木のテープのなかで「鵺の鳴く夜に気をつけろ」の意味が発覚しました。鵺は、竜平と巴の密会の合図で、トラツグミ。平家物語の鵺の声。青木は千畳敷でトラツグミの声真似をするとどのようになるのか知っていたのでしょう。青木は色好みで男前、そして彼と密会した女性の姿を思い浮かべ、金田一は左右に頭を振ります。悪夢を見てから金田一はどうも先入観が混ざり込んでしまって、本人もむかっ腹です。

7月7日夜20時頃。捜査本部に金田一が訪れます。警察より、守衛の左胸に刺さっていた黄金の矢は、最初の一撃目で絶命、その後二度三度押し込んで串刺しにしていて、被害者への並々ならぬ憎悪が窺えると伝えました。磯川警部は焦りが見えていて、それは金田一も気づき労るほど。解剖の結果、守衛も片帆も死亡推定時刻は医師の見立て通りでした。二人は火葬ではなく土葬で、吉太郎が墓の為の土を掘っています。蓑と笠は彼が付けるまでは乾いていました、ただし、他の関係者も乾いていたかどうかは言い切れず、神楽太夫はそんなところにあったなんて知らなかったと言っていました。

神楽太夫一行の聞き取りは四郎兵衛ら年配メンバーは終わっていて、残りは弥之助、誠、勇の若手三人。四郎兵衛の妹の孫の弥之助は基本的に知らないと言い、松若の話もちらっと聞いた程度で誠と勇のほうが詳しいと逃げを打ちます。誠と勇は元々全部話す予定でいて、父親がある日失踪したことも、祖父らが事件に関わることを恐れて松若は死んで墓もあるといったのは嘘だと言います。彼らの言葉に警察も金田一も目を光らせます。
四郎兵衛らは松若はあの夫婦に殺された、先に仇を取れなかったのが口惜しいと言っていたことも伝え、千畳敷という存在、松若がホーッ、ホーッと鳴けば女がやってくると。金田一にその鳥はトラツグミ、鵺とも呼ばれるけど鳴き真似をすれば二人は立ち上がってそれだと。鵺という言葉に磯川警部たちも反応します。また誠たちは立ち聞きしてしまった、片帆と真帆の会話の内容―――人形師の失踪も伝えます。

蓑と笠の事を聞けば、誠は知らなかったが勇は知っていると答え、警察の目は彼に向きます。16時頃、触ってみたら生乾きの状態だった。風流なモノがあるなあと触ったらしく勇はきっちり覚えていました。二人は守衛を殺した犯人を見た、といいそれはカメラを持った青年、五郎でした。ただ二人はなんで磯川警部が五郎を捕まえないのか気になって仕方ない、警察はえこひいきするのかと弾劾し、詰められた磯川警部はずっこけました。

浅川はるの罪、磯川警部の子

金田一は磯川警部より浅川はるからの手紙を渡されます。最初に読んだときの便せんは3枚だったのに、今は5枚。そう、2枚抜けていました。この手紙の恐ろしいところは、1枚ずつ完結しているように読めるので、抜き取っても問題なく読めてしまったことです。この封筒の日付は6月16日、そして磯川警部に渡されたのは6月24日。2枚目、3枚目の内容は下記のものです。

浅川はるは22年前、産婆をしていた。磯川警部の糸子が産んだ赤ん坊を取り上げた。その赤ちゃんは健やかな男児。浅川はるは事情があり子供をほしがっている女性に渡さなければいけなかったので、赤ん坊を盗んでその女性に渡した。
その子供が浅川はるのところにきて、本当の両親を教えてほしいと尋ねてきたので、つい嘘を教えてしまった。いまはそれをとても後悔している。

三津木五郎は自分を竜平と巴の子供だと思っていますが、本当は磯川警部の子供です。この手紙を読んだ磯川警部はどれだけ悩み、懊悩し、気を揉んだでしょう。磯川警部の五郎への歯切れの悪い態度も窺えます。なおこの重要な2枚目、3枚目を抜き取ったのは磯川警部です。金田一は長い付き合いの磯川警部の焦燥に気づけなかった自分を恨み、彼の人生を鑑みます。再婚しなかったのは腰の痛みではなく、まだ見ぬ我が子に継母を作りたくなかったからではないか、云々。だけど会ったことないのにどうしてヒッピーの五郎が子供だと解ったのだろうと考えた金田一は、五郎の特徴的な八重歯を思い出し、奥さんの糸子もきっとそうだったに違いないと叩きます。

大声をあげた金田一に声をかけた竜平は、彼に手招きされて席に座ります。時刻は7月8日午後17時。五郎は身柄拘束となっています。勇と五郎を対決した後、勇は確かに五郎だといいますが、五郎は何も言葉を発しません、覚悟を決めている様子です。竜平に五郎が守衛に手をかけた理由を聞かれ、金田一は寂しそうに微笑むと、貴方は知っているんじゃないか。五郎は貴方を父親、そして巴を母親と思い込んでいるため、守衛から巴を助けて竜平に返してあげようと一種のヒロイックリズムに落ちたのでしょうかと話します。ただこの推理は成り立つけど盤石なものではありません。
竜平に請われ、五郎の身の上話を語ります。五郎は文武両道で大学も剣道に打ち込んでいたが卒業前の秋、母親に真実を告げられてたのが強い衝撃、反動するようにヒッピースタイルに落ちていきます。母親は旦那を亡くしてお遍路さん巡りをして、そのときに産婆を見つけ、後を付けて彼女が浅川はるだと知ったと思われます。6月15日に五郎は浅川はるにヒッピー姿で会い、彼女から色々と告げられます。その後、刑部島や竜平の予備知識をいれてヒッピー姿から元のスタイルに戻って、6月25日に刑部島に乗り込んできたというのです。

美しい夢、過去の憧憬

金田一はここで、黄金の矢の寄進の見返りや重大発表の中身を尋ねます。それを聞かれた竜平は口ごもりますが、交換条件について金田一が巴ご寮人だったのではと聞けば、竜平は項垂れて頷きます。同時に私は馬鹿だった、とも。竜平は、守衛が既に離婚届を用意していてあとは巴の捺印と署名のみで、あとは竜平の情熱に任せると笑っていたと話せば、金田一はそれは巴のプライドを傷つける行為であり、一種の人身売買だと咎めます。竜平が金田一と会った日に聞いた青木からのテープ、もう一度流せば「鵺の鳴く夜に気をつけろ」という青木の助言に竜平は両耳を塞ぎます。悔いていると。竜平は何度も何度もテープを聴き直してこの言葉と、色好みの青木の性格、自分に肉体的特徴が似ている青木などを紐付け、意味を理解しました。同時にもう少し前に聞いていれば、自分は守衛とあんな馬鹿な契約をしなかっただろう。このテープを聴いた後、竜平は巴の貞操に何らかの疑惑を持った模様です。
そのため竜平は、過去に美しい夢を見ていた。20年間という月日が流れても人間の本質に変わりは無いと思いこんでいすぎたと後悔の言葉を発します。

予定では6日に離婚届に捺印してそれを渡してもらい、7日に巴にプロポーズする予定でした。しかし離婚届はどこにもなく、おそらく犯人が持ち去ったのでしょうと。そして金田一は五郎の出生を竜平に語るため、磯川警部にあてた浅川はるの手紙を読んでもらいます。その手紙を読んだ竜平は驚愕。なお磯川警部は7日の14時頃に本土の岡山に引き上げました。殆ど寝ていなくて懊悩状態。調べ物があるということでの本土ですが、金田一は磯川警部が辞職やなにゃらの早まった行為に出ないかとても心配しています。この事件はあとちょっとで解決するし、磯川警部の手で解決されるべきだと強く断言。竜平のすすめで、郵便局から磯川警部に「全ての謎は解けた 五郎は犯人ではない すぐに島に来たるべき 金田一」と電報を送ります。

五郎の身柄を拘束したが彼は犯人ではありません。ただ死体損壊、事後共犯の罪に問われるでしょうが弁護士の力量で情状酌量の余地があると金田一は竜平に話します。では誰が守衛殺しの犯人かと聞かれ、金田一はあのときの事情聴取を何度も読み返していたが、あまりにも支離滅裂でボヤ騒ぎを含め、誰でも犯人の可能性があります。ただし五郎が己の身を犠牲にして庇う人間はたった一人しかない――――――それは自分の母親だと思い込んでいる女性、巴ご寮人でした。

ゆきんこ

下巻で巴が犯人だと解ってからの頁数は半分以上ありますので、謎の解明も含めここからが本番です。気になる方は書籍を買おう!

「悪霊島」のネタバレ

半分以上書いていないのですが、ここは是非とも読んでほしいので敢えて記載していませんが自分の頭の整理もかねてネタバレは書きます。犯人は巴であっているのか、どうなのか気になる人は是非読もう。あ、映画とドラマは改変されているので注意です。なんか巴が松子みたいな性格になってるけどそれこそ月とすっぽんなんだよなあ。

「悪霊島」の犯人

荒木清吉・妹尾松若・山城太市・刑部守衛・青木修三・刑部片帆・太郎丸&次郎丸を殺したのは刑部巴で、浅川はる(下妻あき)を殺したのは越智吉太郎です。巴が無尽蔵に殺したその尻拭いを行ったのが吉太郎。守衛のときのみ尻拭いをしたのは三津木五郎。吉太郎の見返りは巴の肉体です。

なお巴は最後に行方不明となりますが彼女を殺したのは越智竜平ではないかと金田一に指摘されています。巴が若かりし頃に産んだ竜平との子ども(太郎丸&次郎丸)の出産を手伝ったがシャム双生児でとっさに殺してしまった、諸々の処理をしたのが浅川はるであり、彼女はずっとこれで刑部家を揺すっていました。

刑部巴は花よ蝶よと愛され神社の娘として敬われて育てられた為か、誰もが自分に尽くすのは当然だと思っているくせに自分一人では生きられず、何も手段を考えられない、その割に自分に向く悪意に耐えきれず、哀れな甘ったれ根性の他責女です(松子を見習え)。身体を好きにさせているのだから、吉太郎を奴隷のように扱うのは当然だと思っていて、今まで失踪した男達の後始末を行うのも当たり前だと思っています。世間からの悪意に耐えきれず、その後のプランも一切考えずに吉太郎に一緒に逃げようと縋って彼を心底呆れさせたり、怖くなって吉太郎から逃げて、今度は竜平にアメリカでもどこまででも連れて行ってと縋るも、竜平は彼女に憐憫の情しか湧かず、狂わせたせめてもの償いとばかりに彼女の首を絞めました。なお巴は死ぬつもりはなく必死に抵抗して指を噛みました。

越智吉太郎は常にいとこの越智竜平と比べられていました。竜平から離された巴は、吉太郎が竜平の肉体的特徴に似ていると気づき、瞼を閉じていれば竜平と錯覚できるとわかると吉太郎と関係を結びます。当初は竜平の身代わりにされていることに怒りもあり、巴も時々竜平の名を呼ぶため、その時は忘れさせるくらい強く交わった模様です。それが功を奏して、巴は竜平の名前を呼ばなくなり吉太郎の名前を呼びますが、巴はやはり吉太郎だけでは満足できないと竜平の肉体的特徴に似た男性を拐かして関係を結びます。それを咎める理由もなく、彼女がある程度の日数交わってムラムラして殺した後の後始末を行いました。肉体の構造も骨もこのとき学んだのでしょう。
吉太郎は怒りが総じて散弾銃を持ち、「本家め!竜平め!」と怒りながら紅蓮洞に入り、金田一たちに銃を向けるも竜平に請われて太郎丸&次郞丸の話や、自分がしてきた事を話します。最終的に神楽太夫の弥之助が背後に忍び、ピストルで一発足を撃てばそれに驚いた吉太郎の銃が跳弾して彼の胸を貫きました。

「悪霊島」の犯人の動機

愛する竜平によく似た体格の男だったから(失踪3人)&浪費諸々憎悪いっぱい(守衛)&産んだ衝撃(太郎丸&次郎丸)。吉太郎は竜平への嫉妬です。巴にとって自分は竜平の身代わりでしかない事実を何十年に渡って突きつけられ、それは現在も続いており竜平への怒りと憎悪がたぎっています。竜平を忘れられない巴は、竜平によく似た体格の男性を見つけると彼らを誘惑し、何度も交わった末、興奮した巴は彼らの喉や舌をかみ切り殺してしまいます。浮気相手との密会の合図が、かつて竜平が巴と決めたトラツグミ(鵺)の鳴き声です。巴はずっとずっと竜平を愛し求め続けているわけです。竜平が結婚して子供がいたらどうしていたんだろうか。
片帆の動機がはぐらかされていますが、予想するに一人で島を抜け駆した事に対する嫉妬じゃないかなと思いました。自分は誰かに縋っていなきゃ生きられないのに、という。

竜平と出会った私をどうかアメリカにでも一緒に連れて行ってと巴は縋ります。巴は竜平を二十年以上心底狂うように愛していますが、竜平から巴への愛情は既に冷めていて残っていたのは憐憫の情。竜平は手袋をした手で巴の首を絞めたとき、抵抗した巴が彼の指を噛んだため、怪我をしています。
辿っていくと駆け落ちをチクった吉太郎、認めずに戦争に追いやった大膳も責任があるんですよ。竜平と別れなければ、巴は壊れなかったんだから。あと精神崩壊しちゃった真帆ちゃんがあまりにも報われないでしょう!!!!!竜平!!!面倒見てやれよ!!!!!!しかも巴はいなくなった真帆を探しに行こうとせず、逆に自分の身が危ういと思って逃げた女です。母親の風上にもおけませんね。

守衛は浪費癖が酷く刑部家の財産という財産を食い潰してしまっていました。倉敷や岡山に地所家作を多数持っているが、守衛の凄まじい浪費の末に残り1年という少ない財産になりました。守衛は巴の古傷を何度も擦っては自分は自由気ままに浮気し、搾取し続け最終的に竜平に売り飛ばして金を得ようとしたため、やはり全ては守衛を選んだ&竜平を追いやった大膳のせいになるわけです。守衛はノンデリなので巴と吉太郎の関係を淫蕩な言葉ではやし立て、巴の自尊心をメタメタに傷つけました。

ただ事件が解決して20年以上も続けられた紅蓮洞の地下宮殿を見て大膳はショックを受けて巴をもう見たくないと倒れてしまいました。

太郎丸さま・次郎丸さま

太郎丸と次郎丸がいた場所は紅蓮洞と呼ばれる天然の洞窟。そこに白骨死体のシャム双生児、太郎丸と次郎丸がいて二人の関節や大事な箇所にテグスが巻かれて崩れないようにポーズを取らせています。太郎丸と次郞丸のいる場所に「太郎丸さま」「次郞丸さま」と掘られていることから、巴の狂った愛が感じられます。刑部家が双子が生まれやすい家系というのは最初から話が合って、大膳が双子だったり片帆真帆の巴の娘が双子ですね。

その周囲には同じく白骨化した荒木定吉・妹尾松若・山城太市が太郎丸と次郎丸を満足させるように周囲にいて、同じようにテグスで関節を固定化しています。定期的に吉太郎によってメンテナンスされています。
青木も殺したあと海に投げた後それに悪鬼の如く怒ったのが巴で、白骨化して太郎丸さま次郞丸さまが喜んでもらえるようにお伽衆にしたかったと未練がましい発言をしていました。じゃあお前やれよって話になる。

ただし、このテグスもメンテナンスも全て巴じゃなくて吉太郎が行っているんですけどね

青木のテープについて

最初から言われているようにこれは「シャム双生児」の太郎丸と次郞丸、巴の習性を話しています。ただしこのシャム双生児は、昭和20年6月に生まれた巴と竜平の子供で太郎丸・次郎丸という名前もついていますが、二人を産んだショックで巴が彼らを殺してしまいます。しかし巴は二人の遺体を荷物に持ち帰ってきました。青木を殺す前に巴が本当のことを全て話し、出てきた吉太郎が彼を殴殺して落人の淵に流してしまいました。

定吉と妹尾家は巴を殴っても罰は当たらないとおもいますね。まじで巴の自己中心的な思いで無関係の人間が多く犠牲になっているんだし。吉太郎?彼はNTRの間男にもなれなかった男でしょ

三津木五郎の出生

出生と情報から自分が越智竜平と刑部巴の不義の子と信じて疑っていなかった五郎ですが、吉太郎の話により、自分が二人の子供ではないと理解。そして大膳が五郎の出生を話します。

産婆の下妻あき(=浅川はる)のもとで同時期に出産していたのは巴だけでなく磯川糸子―――磯川警部の妻も、でした。巴の子供を三津木夫人に渡す予定だった筈が、巴が産んだ子供がシャム双生児だったため渡すことは出来ず代わりに糸子が産んだ子供を三津木夫人に渡してしまった。その子こそが三津木五郎なのです。
したがって三津木五郎の本当の父親は磯川警部です。

まとめ

金田一あるある、男女の縺れと最初に提示された選択肢を選ばなかったが故に引き起こされた惨劇。最初に呼んだときは竜平かわいそうだなとおもいましたが、改めて読んでみると、巴と竜平と吉太郎のせいじゃないか!と思いました。被害者の最上位は真帆ちゃんだよ。竜平が引き取って育ててやれよってレベル。あと巴好きな人いる???

年月
昭和42年5月20日 青木修三、刑部巴に殺害される
年月
6月15日午後14時 三津木五郎、浅川はるに会う

浅川はるは五郎の顔を見て酷く驚いていた

年月
6月19日 浅川はる、越智吉太郞に絞殺される

あまりにも知りすぎている女性故。

年月
6月23日 金田一、磯川警部と再会する
年月
6月24日 金田一、依頼の青木が死んでいることを知る

大富豪の越智竜平より、青木修三を探してほしいというのが依頼だった

年月
6月29日 金田一、竜平とホテルで話す

なおそこには刑部守衛もいた

年月
7月1日 金田一が刑部島に上陸する

島を散策する

年月
7月2日 金田一、三津木五郎と共に島を散策する
年月
7月4日 金田一と磯川警部、行方不明の父を探す荒木定吉と会う

父親の清吉は薬の行商人で9年前に刑部島付近で失踪している

年月
7月5日午前便 神楽太夫一行が刑部島に上陸する

妹尾家は行方不明の松若を探しにも来ている

年月
7月5日15時頃 越智竜平が刑部島に上陸する

すっかり島はお祭りモード

年月
7月5日夜21時頃 刑部片帆が刑部巴に絞殺される

大雨の中。そのまま遺体は隠亡谷へ

年月
7月6日~17時 金田一、刑部大膳と越智吉太郎と一緒に島を一周する

おちょろ舟

年月
7月6日夜20時~21時 刑部守衛が刑部巴に殺害される

事故処理をしたのは三津木五郎

年月
7月7日午前7時頃 越智吉太郎、刑部片帆の死体を発見する

鴉や阿修羅に喰われて見るも無惨

年月
7月8日午後14時 磯川警部、本土に帰還する

相当思い詰めていた

年月
7月8日午後17時 金田一、越智竜平に真実を語る

守衛殺しの犯人、そして……

結合双生児が登場するミステリー作品

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次