「悪魔の降臨祭」は横溝正史先生の中編小説。昭和33年に発表されています。収録されている作品のうち、「女怪」「霧の山荘」は古谷一行さん主演の金田一シリーズでドラマ化されています。表題作だけなにも展開がない
今回は表題作「悪魔の降臨祭」と「女怪」「霧の山荘」の3作品です
\ 戦前の横溝正史先生の作品で一番好きです /
「悪魔の降臨祭」
金田一耕助の探偵事務所で殺人事件が起きた。被害者は、その日電話をしてきた依頼人だった。彼女は、これから殺人事件が起きるかもしれないと相談に訪れたところ、金田一が戻ってくる前に青酸カリで殺されたのだ。
あらすじより
しかも、その時、12月20日であるべき日めくりカレンダーが何者かにむしられ、12月25日になっていた。降臨祭パーティーの殺人を予告する犯人とは――――――(表題作より)。
そのほか「女怪」「霧の山荘」の全三編を収録。
場所は金田一耕助の事務所、時期は12月20日。たまきが昭和21年(1946年)に17歳(数え年で19歳)で彼女は昭和4年(1929年)のうまれ。そして28~29歳という年なので、昭和32年(1957年)の頃の事件だと推測される。
登場人物 | 作中での活躍 |
---|---|
金田一耕助 | 私立探偵 |
小山順子(志賀葉子) | 金田一に依頼をした女性で彼の事務所で死んでいた。最初の被害者。小山は偽名で本名は志賀。関口たまきのマネージャー。 |
関口たまき(関口キヨ子) | 人気ジャズシンガー。本名キヨ子。数奇な人生を送った苦労人にして古風な女性 |
服部徹也 | 関口たまきの旦那。50代を過ぎている。二人目の被害者。 |
道明寺修二 | たまきと同じ事務所の俳優。徹也の死後、たまきと祝言をあげる |
関口梅子 | たまきの伯母 |
服部由希子 | 徹也と可南子の娘で16歳。 |
服部可南子 | 徹也の妻で由希子の母親。青酸カリを飲んで死んでいる |
柚木繁子 | 最初の写真に一緒に写っていた女優 |
「悪魔の降臨祭」の犯人
志賀葉子・服部徹也を殺した犯人は服部由紀子。金田一に追い詰められ、彼女は毒入りのカップを飲んで自殺する。
示唆される程度だが彼女は実母・可奈子も手をかけた可能性がある。当初は尊敬するたまきをとられたくない気持ちから金田一も同情していたが、最後の行動で彼も彼女を「鬼畜の如き所業」と断言する。
「悪魔の降臨祭」の動機
関口たまきの財産目当て。
なお最後の行動で由紀子は再婚相手の道明寺を殺すと思われたが、たまきを毒殺しようとしたので彼女の遺産目当ての行為が明確となった。葉子を殺したのは犬の毒殺実験で感づいた彼女が金田一に相談するのを知ったため。
「女怪」
女怪は金田一耕助が惚れた女性がいることで有名な短編集です。終わり方も珍しいタイプなので余韻がすごい。特にラストの解決編の先生に当てた一文が、金田一にとってよほど衝撃的だったという真実を掻き立てます。
昭和二十×年の夏、先生が金田一耕助と一緒に伊豆の温泉地Nにやってきてから始まる。しかしその年の初夏から夏にかけて「夜歩く」「八つ墓村」の事件を解決していると先生が話しているため、昭和23年の事件と推測できる。
場人物 | 作中での活躍 |
---|---|
金田一耕助 | 私立探偵 |
先生 | 金田一とと懇意にしている探偵作家 |
おすわ | 宿の主人代理 |
跡部通泰 | 狸穴の行者。一種の預言者。賀川春樹と同一人物。 |
持田恭平 | 持田電機の創業者。作中では故人。虹子に殺されている。 |
虹子 | 持田の寡婦。バー「虹子の店」を経営。金田一が惚れた数少ない女性。 |
賀川春樹 | 虹子の恋人で元子爵。跡部通泰と同一人物 |
しかし、先生ご心配にならないで下さい。ぼくは決して、自殺などしないから。……もうひと月ほど放浪したうえで、帰郷することにします。では、いずれその節。
悪魔の降臨祭 P214
「女怪」の犯人
犯人は虹子です。
彼女はとある方法でかつての良人(おっと)・持田恭平を殺しています。
そして彼女を脅迫し、性的な関係を結ぶ修験者「跡部道泰」も持田殺しと同じ手口で殺害しました。
金田一はこれらの事実を彼女のみに送っています。
「女怪」の動機
自分を殺すまでなぶり続ける持田にに対してこのままでは自分の命が危ないと殺害を決めたこと。
虹子は、この事実をネタに脅迫する跡部を殺し、新しい恋人の賀川と結婚して新しい人生を送ると決めたこと。
この事件の最悪の悲劇は、跡部と賀川が同一人物だったことでした。
「霧の山荘」
古谷一行さん主演金田一耕助シリーズでドラマ化したのはかなり初期。原作では狂言だった30年前の事件がドラマでは動機になるほど絡んできて、登場人物もほぼ別人。場所は香水心中の近くかつ、時系列は其の事件の後の模様で9月頃。今回はとある別荘でのお話。孫の事件でも利用されそうなトリックがありますね。生爪剥がされるのめっちゃ痛い
場人物 | 作中での活躍 |
---|---|
金田一耕助 | 私立探偵 |
紅葉照子(西田照子) | 映画スター。最初の被害者。 |
江馬容子 | 照子の姪 |
川島房子 | 照子の姉。彼女のマネージャー |
西田武彦 | 容子のいとこ |
杉山平太 | 金田一を迎えに来た男。第二の被害者。 |
「霧の山荘」の犯人
杉山平太と紅葉照子を殺した実行犯は西田武彦です。共犯は江川容子です。
これは紅葉照子による狂言芝居を利用して照子を殺し、内容を知っている平太を殺そうというもの。当初狂言芝居の目撃者はぜんぜん違う人だったが、照子がセンセーショナルを狙って警察と関係が深い金田一にした。
「霧の山荘」の動機
仔細は語られていないが、照子の財産目当てではなかろうか。
照子には子供がおらず、良人の西田博士の兄妹の子供は西田武彦と江馬容子の二人。
そういう意味ではドラマのほうがしっかりしていたのかも。トリックはなるほどと思ったんだけど、気になっていた箇所がわからなかった
「悪魔の降臨祭」のまとめ
映像化されていない表題作と映像化されている他2編という組み合わせ。悪魔の降臨祭の実写化が難しいのはやはり「白と黒」と同じ理由だからなのかなあとおもいました。「女怪」の余韻は半端ないですね……しんみりとした終わり方が少ないので、この作品が人気なのも頷けます。NHKのドラマのときも本当に良かったし。
記事も多くなってきてしまったなあとしみじみしてます